中妻貝塚

中妻貝塚：縄文時代の息吹を伝える貴重な遺跡

茨城県取手市小文間に位置する中妻貝塚は、縄文時代後期から晩期にかけての重要な貝塚遺跡です。1996年と1999年に取手市指定史跡となり、その歴史的価値が認められています。

概要

中妻貝塚は、小貝川の沖積低地に面した台地上に広がっています。直径約150メートル、総面積25,000平方メートルにも及ぶ広大な範囲に、厚さ1〜2メートルの貝層が堆積しており、利根川流域では最大級の環状貝塚として知られています。貝層は主にヤマトシジミで構成されており、当時の人々の生活様式を物語っています。

この遺跡は、貝塚だけでなく、住居跡、墓、貯蔵穴なども備えた集落遺跡としての特徴も持っています。1972年に取手市による発掘調査が開始され、その後も継続的な調査によって、遺跡の範囲や貝層の堆積状況などが確認されてきました。

特筆すべき発見：100体以上の人骨

中妻貝塚の発掘調査では、住居跡や貝玉製作跡など、数多くの貴重な資料が出土しています。中でも特に注目されるのは、100体以上の人骨が埋葬された土坑の発見です。縄文時代の遺跡から人骨が出土することは珍しくありませんが、一つの土坑からこれほど多数の人骨が発見された例は稀です。

この大量の人骨は、当時の村落の社会組織を解明する上で重要な手がかりとなりました。発掘状況から、これらの人骨は短期間のうちに死亡した、集落内の血縁の濃い人々のものと考えられています。そこで、歯冠の計測値を統計的に処理することで血縁関係の推定が試みられました。

DNA分析による新たな知見

近年、DNA分析技術が発展し、古人骨からもDNAを採取できるようになったことから、中妻貝塚の人骨についてもミトコンドリアDNA分析が行われました。さらに、千葉県茂原市の下太田貝塚の人骨の分析も併せて行うことで、多くの新たな知見が得られました。

分析結果は、NHKスペシャル「日本人 はるかな旅」で紹介され、大きな話題を呼びました。番組では、「DNA分析の結果、シベリアのブリヤート人と遺伝的に最も近いことが判明した」と紹介され、日本人のルーツを探る上で重要な発見として注目されました。

中妻貝塚は、縄文時代の生活や社会構造、そして日本人のルーツを探る上で、非常に重要な遺跡です。今後の研究によって、さらに多くのことが明らかになることが期待されます。

参考文献

西本豊弘「血縁関係の推定-中妻貝塚の事例-」『人と社会（縄文時代の考古学 10）』 同成社、2008年、ISBN 978-4-88621-432-4

外部リンク

中妻貝塚 - 取手市ホームページ

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