中島登

中島 登（なかじま のぼり）

江戸時代末期から明治にかけての激動期を生き抜いた、新選組隊士の一人。本名は中島登、幼少期は峯吉と称し、後に登一郎とも名乗った。

生涯

天保9年（1838年）、武州多摩郡小田野村（現在の東京都八王子市西寺方町）に農家である中島亦吉・イチ夫妻の長男として生まれた。

青年期には剣の道を志し、19歳となった安政3年（1856年）頃、同郷の天然理心流剣術家・山本満次郎の門を叩き、その技を修めた。安政4年（1857年）には安藤マスと結婚し、長男・歌吉（後の登一郎）が誕生している。

一時期、八王子千人同心に属したが、同僚との間に生じた争いから殺傷事件を起こしてしまう。これにより追われる身となり、親戚である井上益五郎のもとに匿われたとされる。

元治元年（1864年）、新選組に入隊する。入隊後は、近藤勇の密命を受け、故郷を含む武州、甲州、相模といった地域の地理調査を秘密裏に行っていたといわれる。慶応3年（1867年）には伍長に昇進。

慶応4年（1868年）春、流山において近藤勇が新政府軍に投降した際、その身柄を護送する薩摩藩士・有馬藤太を追跡しようと試みたが、厳重な監視のため目的を果たせず、無念のうちに帰京した。

その後、土方歳三や島田魁らと共に旧幕府軍に加わり、戊辰戦争では各地を転戦した。宇都宮の戦い、日光口の戦い、そして会津戦争などで旧幕府軍（大鳥圭介隊など）と共に戦線を維持しようとした。会津戦争では、負傷した彰義隊士・大島清慎を救護所まで運んだという逸話も残っている。戦線が膠着すると、仙台で榎本武揚率いる旧幕府海軍と合流し、蝦夷地へ渡った。

蝦夷地においては箱館戦争に参加。箱館の弁天台場にて第二分隊の嚮導役を務めた。

明治2年（1869年）5月、弁天台場での降伏を受け入れた。降伏後は弁天台場で謹慎した後、青森に送致され、弘前藩での預かりなどを経て、約8ヶ月間の謹慎生活を送った。明治3年（1870年）5月に赦免され、故郷である多摩の地へと帰還した。

帰郷後、静岡藩の開墾事業に協力し、自らの所有する田地を人々に譲るなど貢献した。また、浜松にてかつての戦友であり、彰義隊士であった大島清慎（当時、浜松裁判所・登記所の代書人となっていた）と再会。これを機に浜松に定住することを決意し、明治12年（1879年）には故郷に残っていた長男・登一郎を浜松に呼び寄せた。明治15年（1882年）には、魚屋沢木半平の娘・ヨネと再婚し、新たな家庭を築いた。

浜松での生活においては、様々な商売に挑戦した。当初は旧幕臣と協力して質屋を始めたが、これは成功しなかった。明治14年（1881年）、趣味として栽培していた葉蘭の中から偶然、新種の葉蘭が誕生。この葉蘭は品評会で「金玉廉（きんぎょくれん）」と名付けられ、一時は驚異的な売れ行きを示したが、飼っていた馬に親株を食べられてしまい、事業を断念せざるを得なくなった。諦めずに、明治17年（1884年）には「鉄砲火薬売買人」の免許を取得し、「中島鉄砲火薬店」を開業している。

明治20年（1887年）4月2日、浜松の地で波乱に満ちた生涯を終えた。享年50歳。墓所は浜松市中央区下池川町の天林寺にあり、戒名は隆慶院孝庵義忠居士と諡号された。

辞世の句と家訓

中島登は、死の約3ヶ月前、明治20年（1887年）1月1日に以下の辞世の句を残している。

たかくとも 五十（いそ）の峠をやすやすと 越ゆれば御代の 春ぞのどけき

また、子孫のために以下のような家訓を遺したことでも知られる。

一、食物については、決して好き嫌いを言うべからず。
一、囲碁や将棋など、勝負事は一切行うべからず。
一、質屋や金貸しといった商売は、孫子の代に至るまで決して行うべからず。

関連資料

新選組に関する貴重な資料として、自身が描いた隊士たちの肖像集である『戦友絵姿』や、自身の体験を記した『中島登覚え書』といった手記を後世に残しており、幕末維新期の研究において重要な資料となっている。

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