中島AT-2

中島AT-2

中島AT-2（なかじまAT-2）は、日本の中型旅客機で、中島飛行機によって開発されました。1936年に初飛行を果たし、満洲航空を通じて直ちに運航を開始しました。日本と中国大陸間の航空交通を効率化するための要請に応える形で、その設計が進められた背景には、当時の満洲航空からのニーズが大きく影響しました。

開発の経緯

1934年末、満洲事変の影響で日本は中国大陸に対する航空輸送を強化する必要がありました。この状況に対処するため、中島飛行機ではダグラス DC-2の国産化に並行して、AT-2の設計が行われました。設計の主導をとった中島の技術者明川清は、DC-2の開発責任者でもあり、これらの経験がAT-2の設計に色濃く反映されました。なお、ATという略称は設計当初は「Aerial Transport」としていましたが、後に「Akegawa Transport」と誤解されることもありました。

当時、日本には中型旅客機を設計するノウハウが不足していたため、DC-2をはじめとするアメリカ製機体からの技術が大量に取り入れられました。また、最初の設計案であるAT-1は図面だけで終わり、次に作られたAT-2が試作機として完成しました。1936年9月12日には初飛行を達成し、数日後には飛行検査を完了して満洲国に運ばれました。

機体の特徴

AT-2の機体は、多くのアメリカ製輸送機を参考にした設計で、DC-2よりも若干小さい寸法が特徴でした。外翼はノースロップ2Eの構造を用い、他の部分はDC-2から影響を受けていましたが、明川はさらに改善を加え、尾翼面積や舵面比率を調整。胴体は角型で、独自の風防形状も採用されていました。特に、操縦席の風防は気流をスムーズに流す設計で、雪が貼り付きにくい特性を持っていました。

最初に用いられたエンジンカウルは小型で突起が付いたものでしたが、後に滑らかなデザインに変更されました。これにより、空気抵抗が減少し、機体性能の向上が図られました。

生産と運用

AT-2は満洲国に運ばれ、「国光号」と命名され、直ちに満洲航空に納入されました。日本国内では日本航空輸送や後身の大日本航空でも活用され、さらに陸軍も九七式輸送機として採用しました。最終的にAT-2は33機、九七式は318機が製造されましたが、ダグラス DC-3の国産化に伴い量産は立川飛行機に引き継がれることとなります。

AT-2と九七式は、その小型ながらも旅客輸送に大いに貢献した機体でしたが、新たに登場した三菱重工業の一〇〇式輸送機や民間用MC-20により、その役割を次第に譲ることになりました。それでも、終戦時まで活躍を続けました。

機体性能

• - 運航乗員：3名（ただし一部の情報では2名）
• - 乗客数：8〜10名
• - 貨物搭載量：200 kg
• - 客席サイズ：1.7 m × 1.4 m × 4.8 m
• - 全長：15.30 m
• - 全幅：19.95 m
• - 全高：3.90 m
• - 翼面積：49.20 m²
• - 翼面荷重：95.5 kg/m²
• - 空虚重量：3,500 kg
• - 全備重量：5,250 kg
• - エンジン：2 × 中島「寿」二型改（580馬力、試作機のみ） / 2 × 中島「寿」八型（620馬力、量産型）
• - 最大速度：360 km/h
• - 巡航速度：310 km/h（その他の情報では300 km/h）
• - 航続距離：1,200 km
• - 上昇限度：7,000 m

参考文献

• - 木村秀政･田中祥一『日本の名機100選』文春文庫 1997年
• - 松崎豊一 文・鴨下示佳 画『図説 国産航空機の系譜 上』グランプリ出版 2004年

中島AT-2は、日本の旅客機の歴史の中で重要な位置を占めています。

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