中川銓吉

中川銓吉

中川 銓吉（なかがわ せんきち）は、明治から昭和初期にかけて活躍した日本の数学者であり、教育者です。1876年7月18日、石川県に士族の子として生を受け、1942年9月4日にその生涯を閉じました。専門分野は主に幾何学、特に射影幾何学や曲面論の研究で知られています。

生い立ちと学歴

石川県で中川富三ときくの子として生まれた銓吉は、1895年7月3日に第四高等学校第二部理科を卒業しました。その後、数学への道を志し、東京帝国大学理科大学数学科に進学。特待生として優秀な成績を修め、1898年に同大学を卒業しました。

職歴と海外留学

大学卒業後、中川は教育者としてのキャリアをスタートさせます。1898年8月13日には第二高等学校教授に任じられ、翌1899年9月5日には高等官七等として高等師範学校教授に任命されました。教育者としての経験を積む傍ら、さらなる研鑽のために海外留学の機会を得ます。

1901年11月16日、文部科学省の外国留学生として日本を発ち、数学研究の中心地の一つであったドイツに留学しました。約3年半の留学期間を経て、1905年2月27日に帰国。この海外での経験は、その後の研究活動に大きな影響を与えたと考えられます。

東京帝国大学での研究と教育

帰国後、1904年11月25日に東京帝国大学理科大学助教授に迎えられました。そして1907年5月21日には、数学第一講座を担当することになります。この時期には、幾何学に関する研究成果を発表し、1907年に論文「ハイパーボリック」を提出して理学博士号を取得しました。また、1910年代には研究・教育のために貴重な幾何学模型を海外から輸入するなど、数学の発展と教育環境の充実に努めました。

1914年4月26日には東京帝国大学理科大学教授へと昇任。その後も担当講座を移り、1920年には数学第一講座から数学第四講座へ、1935年には設立間もない数学第五講座を担当するなど、幅広く教育・研究活動を展開しました。彼は講義でも幾何学を重点的に扱い、多くの学生を指導しました。小島浩、清宮俊雄、矢野健太郎といった後に著名となる数学者たちも彼の授業を受けた学生の中に含まれます。

栄典と晩年

中川銓吉は、その長年の功績と貢献に対して、多くの栄典を授けられました。官位としては従七位から始まり、最終的には1937年4月20日に正三位に叙されています。勲章についても、1911年6月28日に勲六等瑞宝章、1915年6月26日に勲五等瑞宝章、1917年6月26日に勲四等瑞宝章、1921年までに勲三等瑞宝章、そして1923年までに勲二等瑞宝章を受章するなど、その功績が国によって高く評価されていたことが伺えます。

1939年に東京帝国大学を退官し、名誉教授の称号を得ました。大学を離れてからも数学への情熱は衰えることはなかったでしょう。教育者として、研究者として日本の数学界に貢献した彼は、1942年9月4日にその生涯を終えました。

私生活と著作

私生活では、千村正晴の長女である秀と結婚しています。

また、彼は多数の著作を残しており、これらは当時の日本の数学教育や研究の状況を知る上で貴重な資料となっています。主な著作としては、『平面解析幾何学』（1913年）、『最新算術教科書』（1919年）、『高等立体幾何学通論』（黒河龍三共著、1932年）、『近世綜合幾何学演習』（1948年刊行）などがあり、教科書や専門書、啓蒙書まで幅広い分野で執筆活動を行いました。

中川銓吉は、激動の時代に日本の数学教育と研究の礎を築いた一人として、その功績は今なお記憶されています。

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