中村健之介

中村健之介（なかむら けんのすけ）は、1939年6月24日に新潟県三条市で生まれ、2022年9月22日に83歳で亡くなった日本のロシア文学研究者です。北海道大学名誉教授の称号を持ち、その研究人生はドストエフスキー研究と、晩年には宣教師ニコライ・カサートキンの研究に大きく貢献しました。

学歴と職歴

中村氏は、国際基督教大学教養学部を卒業後、東京大学大学院比較文学比較文化博士課程を中退しました。その後、北海道大学で助教授、教授を歴任し、1995年には東京大学教養学部の教授に就任しました。2000年に東京大学を定年退官した後は、大妻女子大学比較文化学部の教授として教鞭をとり、2010年に定年退任しました。

研究活動

中村氏の主要な研究テーマはドストエフスキーであり、その作品と生涯に関する深い洞察を示しました。特に、ドストエフスキーの文学作品における人間描写や哲学的な考察に焦点を当てた研究は、多くの研究者や文学愛好家から高く評価されています。

近年では、ロシア正教の宣教師であるニコライ・カサートキンの研究にも力を入れ、その業績は国際的にも認められています。ニコライの全日記の監訳は、2007年に日本翻訳出版文化賞を受賞するなど、その功績は多岐にわたります。

著書

中村氏は、数多くの著書を執筆しており、その一部を以下に示します。

• - 『ドストエフスキー・作家の誕生』（みすず書房, 1979年）
• - 『ドストエフスキー　生と死の感覚』（岩波書店, 1984年）
• - 『ドストエフスキーと女性たち』（講談社, 1984年）
• - 『ドストエフスキーのおもしろさ』（岩波ジュニア新書, 1988年）
• - 『ドストエフスキー人物事典』（朝日新聞社（朝日選書）, 1990年 / 講談社学術文庫, 2011年）
• - 『知られざるドストエフスキー』（岩波書店, 1993年）
• - 『宣教師ニコライと明治日本』（岩波新書, 1996年）
• - 『永遠のドストエフスキー』（中公新書, 2004年）
• - 『宣教師ニコライとその時代』（講談社現代新書, 2011年）
• - 『ニコライ 宣教師の宝は他を憐れむ心だけだ』（ミネルヴァ書房：日本評伝選, 2013年）

これらの著書は、ドストエフスキーの文学的魅力やニコライの歴史的意義を広く伝えるだけでなく、ロシア文学や文化への理解を深めるための重要な資料となっています。

翻訳

また、翻訳家としても活躍し、ドストエフスキーやニコライに関する貴重な文献を日本語に翻訳しました。

• - 『ドストエフスキイ裁判記録』（ベリチコフ編, 現代思潮社, 1971年）
• - 『ドストエフスキーの青春』（コマローヴィチ, みすず書房, 1978年）
• - 『ニコライの見た幕末日本』（講談社学術文庫, 1979年）
• - 『スースロワの日記 ドストエフスキーの恋人』（ドリーニン編, みすず書房, 1989年）
• - 『明治の日本ハリストス正教会』（教文館, 1993年）

これらの翻訳を通じて、日本の読者はロシア文学や歴史へのアクセスを深めることができました。

共訳・編訳・監訳

さらに、多くの共訳、編訳、監訳の仕事も手がけています。

• - 『ドストエフスキーの手紙』（北海道大学図書刊行会, 1986年）
• - 『ドストエフスキー写真と記録』（V.ネチャーエワ, 論創社, 1986年）
• - 『明治日本とニコライ大主教』（ドミートリー・マトヴェーヴィチ・ポズニェーエフ, 講談社, 1986年）
• - 『ドストエフスキー裁判』（N.F.ベリチコフ編, 北海道大学図書刊行会, 1993年）
• - 『宣教師ニコライの日記抄』（北海道大学図書刊行会, 2000年）
• - 『宣教師ニコライの全日記』（全9巻, 教文館, 2007年）
• - 『ニコライの日記』（全3巻, 岩波文庫, 2011年）

これらの業績は、研究者としての深い知識と、ロシア文化への熱い情熱を示すものです。

人物

中村氏の長女は、明治大学教授（英語圏文学）の中村和恵氏です。その知的な血筋は、文学研究の世界で脈々と受け継がれています。

中村健之介氏は、その卓越した研究業績と、教育者としての指導力によって、多くの人々に影響を与えました。彼の研究は、ロシア文学研究の発展に大きく貢献し、後世の研究者にとって重要な道標となるでしょう。

死去

2022年9月22日、肺炎のため、83歳で逝去されました。彼の業績は、今後も長く語り継がれることでしょう。

もう一度検索