中村川 (横浜市)

中村川：横浜の歴史と都市を映す水路

中村川は、神奈川県横浜市を流れる二級河川であり、大岡川から分岐する水路です。南区の蒔田公園付近から始まり、山手地区の北側を流れ、横浜港へと注ぎます。この川は、単なる水路としてだけでなく、横浜の歴史と都市の変遷を今に伝える存在です。

川の概要

中村川は、横浜市南区の花之木出入口で大岡川から分流し、南区中村町付近の池下橋で堀割川を分けた後、山手地区の山沿いを流れ、山下公園の横の山下橋で横浜港に合流します。川の西側、元町と山下町の間の区間は「堀川」とも呼ばれます。周辺には、よこはまばし商店街、元町商店街、横浜中華街といった繁華街や、山下公園、港の見える丘公園といった観光地が点在しますが、川の上には首都高速が走っており、やや薄暗く、ひっそりとした雰囲気が漂います。

歴史

江戸時代初期まで、中村川と大岡川に挟まれた地域は、現在の桜木町付近まで続く入り江でした。その後、この入り江は埋め立てられ、吉田新田として生まれ変わりました。中村川は、吉田新田の南端に沿って作られた川であり、新田内の他の川と繋がっていましたが、これらの川は明治時代から戦後にかけて埋め立てられ、現在では中村川のみが残っています。また、関内東部は、元々南から伸びる砂州であり、1860年に堀割川が開削されたことで、周囲から切り離されました。

船舶と人々の暮らし

かつて、中村川と大岡川の河口付近には、外国船の荷揚げを行う船上生活者が多く暮らしていました。そのため、山下町には船上生活者の子供たちのための学校「日本水上学校」が1942年に開校されました。その後、学校は何度か場所を移転し、最終的には山手で閉校。閉校後は、聖坂養護学校に引き継がれました。第二次世界大戦後も、船上生活者の小屋が多数浮かび、船上スラム街と化していましたが、その後、ギャラリーやバーとして活用された船も現れ、横浜の名物となりました。これらの船の多くは沈没または撤去されましたが、映画を上映し宿泊施設としても利用された「船の休憩所・北斗星」は長く営業を続けました。しかし、管理者の死去後に廃墟となり、最終的に撤去されました。1981年には、木造ダルマ船を改装した「横浜ボートシアター」が開業しましたが、このダルマ船は沈没。劇団はその後も活動を続けています。現在でも、過去の名残として、不法係留のバージ船などが残っており、神奈川県が注意を呼び掛けています。2020年4月には、最後に残ったバージ船も撤去されました。

交通

中村川の上には、首都高速神奈川3号狩場線が走り、石川町ジャンクションでは首都高速神奈川1号横羽線と合流します。また、JR根岸線の石川町駅は、川の上に建設されており、元町口と中華街口が川を挟んで設置されています。さらに、2004年には、横浜高速鉄道みなとみらい線の元町・中華街駅が川の下に開業しました。

橋梁

中村川には以下の主要な橋が架かっています。

吉野橋
共進橋
日枝橋
睦橋
池下橋
久良岐橋
千歳橋
道場橋
三吉橋
東橋
車橋
亀の橋
西の橋
前田橋
谷戸橋
山下橋

関連事項

大岡川 (神奈川県)
堀割川

中村川は、その歴史と都市構造の中で重要な役割を果たしており、横浜の過去と現在を繋ぐ貴重な水路と言えるでしょう。

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