大岡川 (神奈川県)

大岡川：横浜の歴史と文化を彩る川

大岡川は、神奈川県横浜市を流れ、横浜港に注ぐ二級河川です。上流部では「笹下川」とも呼ばれ、市民に親しまれています。その歴史は古く、流域には様々な物語が刻まれています。

川の流れと変遷

大岡川は、横浜市磯子区の氷取沢町を源流とし、北へ流れます。港南区で日野川と合流し、名称を大岡川に変え、南区、中区を流れ、横浜港へと注ぎます。全長約12kmのうち、二級河川指定部分は約8.5kmです。

かつて、江戸時代には、現在の下流域一帯は吉田新田の干拓によって埋め立てられる前は、大岡湾または蒔田湾という入り江でした。この入り江は、戦国時代には蒔田吉良氏の支配下で港湾としての役割も果たしていました。その後、室町時代には鶴岡八幡宮再建の際、資材運搬に利用された歴史もあります。

17世紀半ばからは埋め立てが進み、新田開発が行われ、横浜港開港後には堀川や堀割川が運河として整備されました。大岡川本流と中村川の間を流れていた河川は、明治から昭和にかけて埋め立てられ、現在では公園や高速道路として利用されています。

また、1981年には上流部から東京湾へ直接放流する笹下川分水路が建設されました。

歴史と文化

大岡川の周辺には、桜並木が整備され、毎年「大岡川さくら祭り」が開催されます。かつては梅林が広がっており、特に杉田梅林は江戸時代には観光地として賑わいました。また、戦後には米軍の進駐に伴い、川沿いに売春宿が立ち並んだ歴史も持ちます。1960年代までは、河口付近に水上生活者が多く存在し、港湾労働者が生活を営んでいました。

現在、大岡川では、毎年8月に戦没者を悼む灯籠流しが行われています。横浜名産のスカーフは、かつてこの川で染められていました。近年まで、港南区笹下地域には、捺染工場の最後の1軒が存在していました。

近年の取り組み

2007年3月には、「大岡川川の駅運営委員会」が設立され、環境浄化と地域活性化を目的とした活動が始まりました。「川の駅 大岡川 桜桟橋」のような親水施設が設置され、Eボートやプレジャーボートの利用を通じて、河川利用が促進されています。

2015年には動力船専用の浮桟橋「横浜 日ノ出桟橋」が完成し、より多様な河川利用が可能になりました。これらの活動には、水辺荘や横浜SUP俱楽部などの団体も協力し、イベント開催や賑わい創出に貢献しています。近年では、ハワイ発祥のウォータースポーツであるスタンドアップパドルサーフィン（SUP）も楽しまれています。

環境問題と自然

下流部では、ヘドロによる悪臭が発生することもありましたが、近年は清掃活動が行われ、改善が見られます。2002年には、野生のアゴヒゲアザラシ「タマちゃん」が出現し、話題となりました。2024年10月には下流域で赤潮が発生し、夜光虫の大量発生による発光現象が確認されました。

支流と橋梁

大岡川には、以下の支流があります。

大岡川分水路：日野川と大岡川本川から取水し、根岸湾へ放水。
日野川
中村川
堀割川

大岡川には、多くの橋が架かっています。

主な橋梁

青木橋
久保橋
大久保橋
京急本線の橋（上大岡駅付近）
最戸橋
越戸橋
向田橋
中里橋
与七橋
花見橋
観音橋
さくら橋
弘岡橋
大井橋
鶴巻橋
蒔田橋
井土ヶ谷橋
清水橋
山王橋
一本橋
道慶橋
白金橋
栄橋
太田橋
末吉橋
黄金橋
旭橋
長者橋
宮川橋
都橋
桜川橋
大江橋
住吉橋
弁天橋
さくらみらい橋
北仲橋
国際橋
女神橋

大岡川は、歴史、文化、自然、そして人々の生活が交差する、横浜の重要な一部です。その流れは、今もなお、横浜の街を潤し続けています。

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