中村惕斎

中村惕斎（なかむら てきさい）

中村惕斎は、寛永6年（1629年）に生まれ、元禄15年（1702年）に没した江戸時代前期の儒学者、本草学者です。名は之欽（しきん）、字は敬甫（けいほ）。七左衛門、仲二郎という通称も持っていました。

生涯

京都の呉服屋の子として生まれた惕斎は、幼少の頃から学問を好み、7、8歳で句読を学び始めました。しかし、物価や世事に疎く、市中の騒がしさを嫌ったため、家業には無頓着でした。家業が傾いても意に介さず、学問に専念する日々を送りました。

ほぼ独学で朱子学を修め、天文学、地理、度量衡、音律に至るまで、その奥義を究めました。当時の人々は、惕斎の学識を伊藤仁斎と比較し、「兄とも弟ともしがたい」と評したほどです。菊池黄山、加藤艮斎、増田立軒（増益夫）といった門弟を育てました。

惕斎は礼儀や徳義を重んじる人物でした。かつて、家の手代に財産を持ち逃げされた際も、「我が財のために人を死地に追いやることは不慈である」として、訴え出ることをしませんでした。また、「自ら著書を出版して名を求めるのは恥である」と考えていたため、彼の著書の多くは、没後に出版されました。

大正4年（1915年）には、その功績が認められ、従四位を追贈されました。

著書・編著

惕斎は多数の著書・編著を残しました。以下はその一部です。

『四書示蒙句解』27巻
『訓蒙図彙』
『入学紀綱』
『大学筆記』
『中庸筆記』
『論語筆記』
『孟子筆記』
『詩経筆記』
『書経筆記』
『周易筆記』
『春秋筆記』
『礼紀筆記』
『読易要領』
『四書鈔説』12巻
『孝経集解』
『通書筆記』
『西銘筆記』
『三器通考』6巻
『天文考要』4巻
『匠人測景定方図説』
『愼終疏節』4巻
『追遠疏節』
『筆記律呂新書説』3巻
『姫鑑』32巻
『近思録鈔説』
『近思録示蒙句解』
『孝経示蒙句解』
『小学示蒙句解』
『詩経示蒙句解』
『筆記詩集伝』16巻
『太極図説筆記』

参考文献

原念斎『先哲像伝』（有朋堂文庫『先哲像伝・近世畸人伝・百家琦行伝』所収、1914年）
* 原念斎『先哲叢談』（平凡社〈東洋文庫〉、1994年）

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