中村時雄

中村時雄：松山市政を担った政治家の生涯

中村時雄（なかむら ときお、1915年6月12日 - 2001年3月20日）は、日本の政治家であり、衆議院議員と松山市長を歴任しました。4期16年にわたる市長在任中は、松山市の発展に大きく貢献。また、愛媛県知事である中村時広は彼の息子です。

生い立ちと初期の経歴

中村時雄は松山市の和気で生まれました。愛媛県立松山商業高等学校を中退後、19歳でブラジルへ移住し、農業経営に4年半携わります。帰国後、日中戦争勃発により再渡航が困難となり、北予中学へ編入。卒業後、中国へ渡り北京大学農学院（現在の中国農業大学）で学びました。1943年に同大学を卒業後、兵役に就き、敗戦後に日本へ引き揚げ、農林大臣秘書官などを務めました。

国政への挑戦と衆議院議員時代

33歳で政界に足を踏み入れ、1949年の総選挙で愛媛1区から民主農民党より立候補するも落選。その後、日本社会党（右派）から1952年の総選挙に挑みましたが、次点に終わります。1953年の総選挙で右派社会党から出馬し、初当選を果たしました。当時37歳の中村は、全国最年少の当選者でした。その後、民社党へ移籍し、5回の当選を重ね、農政全般や離島振興法の制定に尽力しました。しかし、1969年と1972年の総選挙で落選し、国政の舞台から退きました。

松山市長としての実績

1975年、中村は松山市長選挙に出馬し、当選を果たします。宇都宮孝平前市長の引退後、松山市は四国を代表する工業都市・中核都市として発展し、人口は四国最大となっていました。中村は「対話の政治」を掲げ、庶民性を前面に出した選挙戦を展開し、自民党推薦の元愛媛県副知事を破りました。この勝利の背景には、自民党の一部支持や、社会党・共産党支持者の票が中村に流れたことが挙げられます。

市長としての中村は、「地方自治体にイデオロギーは不要」として、幅広い政党と連携。高度経済成長後の財政難に対応し、盤石な体制を築き上げました。4期にわたる市長在任中、第18代全国市長会会長も3期務めています。

中村市政では、工業化路線から文化施設建設へとシフトし、1981年には子規記念博物館を開館しました。また、松山総合公園を整備するなど、市民の文化的なニーズに応える政策を推進しました。国際交流にも力を入れ、1981年にサクラメント市、1989年にフライブルク市と姉妹都市提携を結んでいます。

市長落選とその後

1991年の市長選挙では、息子の中村時広の活動が影響し、自民党からの圧力を受けます。助役だった田中誠一郎が出馬し、自民党・民社党の主流派が田中を支援する中、中村は社会党の推薦と一部市議の支援を受け選挙戦に臨みます。激しい選挙戦の末、高齢多選批判を受け、中村は田中に敗れました。同年、勲二等旭日重光章を受章。

その後、田中市政が3選を目指した1999年の松山市長選挙で、中村時広に敗れるという因縁の対決が繰り広げられました。

親族

* 子息：中村時広（元衆議院議員・前松山市長・現愛媛県知事）

中村時雄は、地方自治の発展と文化振興に尽力した政治家として、その功績は今も語り継がれています。

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