中村義雄

中村義雄：中古文学と絵詞文学の研究者

中村義雄（1925年-1993年）は、日本の国文学を代表する学者の一人です。専門は中古文学、中でも『源氏物語絵巻』などに代表される絵詞文学の研究で知られています。その業績は、学術論文や著書、そして古典作品の校注・挿絵と多岐に渡ります。

学歴と師事関係

群馬県太田市に生まれた中村は、東京高等師範学校を経て、東京大学文学部国文学科を卒業しました。大学院では、国文学の泰斗である池田亀鑑に師事し、源氏物語研究に携わりました。池田亀鑑の『源氏物語大成』の図録篇作成にも参加するなど、薫陶を受けた池田の学風を色濃く受け継いでいます。また、東京高等師範学校時代には山岸徳平に師事し、その影響も受けたといわれています。

研究と業績

中村の研究の中心は絵詞文学でした。『絵巻物詞書の研究』は彼の代表作であり、1983年にはこの業績により角川源義賞を受賞、筑波大学より文学博士の学位を授与されています。この研究は、絵画と文章が一体となった絵詞文学の奥深さを解き明かし、高く評価されました。

絵詞文学の研究に加え、幅広い中古文学の研究にも携わり、多くの著書を著しました。代表的な著書には、『王朝の風俗と文学』、『魔よけとまじない－古典文学の周辺』などがあり、いずれも中古文学への深い造詣を示すものです。また、『宇治拾遺物語・古本説話集』（岩波書店、新日本古典文学大系）の校注にも参加するなど、古典文学の普及にも貢献しています。

日本画家としての側面

中村は、学究生活に加え、日本画家としての顔も持っていました。服部有恒に師事し、池田亀鑑の著作や、小学館の『日本国語大辞典』『古語大辞典』『日本古典文学全集』といった主要な古典籍の挿絵を手がけています。これらの挿絵は、高い芸術性と古典への深い理解に基づいたものであり、作品をより深く理解するための重要な視覚資料となっています。萩谷朴の校注書にも挿絵を提供するなど、その才能は広く認められていました。

教員としての経歴

東京成徳短期大学助教授、二松学舎大学教授、大東文化大学教授を歴任しました。それぞれの大学で後進の育成に尽力し、多くの弟子を育てました。大東文化大学では1987年に退職しています。

死去

1993年、呼吸不全のため67歳で死去しました。

関連人物

中村義雄の生涯と研究を語る上で、池田亀鑑、山岸徳平といった師や、中田祝夫、萩谷朴といった同時代の研究者との交流は欠かせません。彼らとの学問的交流が、中村の研究に大きな影響を与えたことは間違いありません。

まとめ

中村義雄は、絵詞文学を中心とした中古文学研究において、多大な貢献を果たした学者でした。研究者、教育者、そして芸術家としての多様な顔を持つ中村の生涯は、日本の国文学研究史に重要な足跡を残しています。彼の業績は、これからも多くの研究者や愛書家によって受け継がれ、発展していくことでしょう。

もう一度検索