山岸徳平

山岸徳平：マラソンと古典文学を愛した国文学者

山岸徳平(1893-1987)は、20世紀日本の国文学界を代表する学者の一人です。新潟県に生まれ、東京高等師範学校を経て東京帝国大学を卒業後、その学問人生は、大学教授、そして大学学長という要職を歴任する華々しいものでした。専門は中古文学であり、その深い造詣は多くの著書や校注を通して現代にまで受け継がれています。

学習院から東京教育大学へ

山岸は、東京高等師範学校時代には、現在の筑波大学陸上競技部にあたる徒歩部に所属し、マラソン選手として活躍しました。金栗四三という偉大な先輩とマラソン大会に出場した経験は、彼の生涯に大きな影響を与えたと考えられます。大学卒業後は学習院教授、東京文理科大学助教授、そして東京高等師範学校教授を兼任。1939年には東京文理科大学教授に昇格し、「トッペイ先生」の愛称で親しまれ、学生からは気軽に声をかけられる気さくな先生として慕われていました。

戦後、東京文理科大学が東京教育大学に統合されると、彼は東京教育大学の教授となり、1954年には同大学を定年退官、名誉教授となりました。その後も、実践女子大学教授として教鞭をとり、1958年と1966年には同大学学長も務めました。さらに中央大学教授も兼任するなど、精力的に教育活動に携わりました。1961年には学位論文『懐風藻の研究』を提出し、博士号を取得しています。

中古文学研究への貢献

山岸の研究は中古文学に集中していました。その業績は、単著『源氏物語開題 尾州家河内本』、『源氏物語研究序説 河内本』、『日本精神叢書 懐風藻と日本文化』、『新日本文学史』、『説話物新釈』、『書誌学序説』、『近世漢文学史』など数多くの著書に見て取ることができます。また、『現代語訳国文学全集 第12巻 今昔物語集』、『枕草子』、『大鏡』、『唐詩評解』、『堤中納言物語評解』、『平中物語・和泉式部日記・篁物語』、『八代集全註』、『堤中納言物語』、『源氏物語』、『五山文学集、江戸漢詩集』、『無名草子』など、古典文学作品の数々の校注・訳注も手掛けています。これらの仕事は、現代の私たちが古典文学に触れる上で欠かせないものとなっています。

特に注目すべきは、1938年に宮内庁図書寮（現在の宮内庁書陵部）で『とはずがたり』を発見したことです。書籍目録では「地理」に分類されていたものを、書名からその内容を察知し、探し出したという逸話は、彼の博識と鋭い洞察力を物語っています。

山岸徳平文庫

山岸の膨大な蔵書は、1965年頃に実践女子大学に寄贈され、「山岸徳平文庫」として保存されています。和歌、物語、随筆などの国文学関係の古典籍を中心に、漢籍、日本漢詩文、仏教書なども含む貴重なコレクションで、日本の古典籍6321点、漢籍751点を数えます。この文庫は、後世の研究者にとって貴重な資料を提供し続けています。

スポーツマンとしての山岸徳平

学究生活の傍ら、山岸はスポーツにも情熱を注ぎました。東京高等師範学校時代からのマラソン愛好家で、大日本体育協会評議委員、全日本陸上競技連盟理事、全国マラソン連盟副会長なども務めました。気分転換にマラソンをするほど熱心で、富士山には100回以上も登頂したそうです。

まとめ

山岸徳平は、国文学者として、教育者として、そしてスポーツマンとして、多方面で活躍した人物でした。彼の業績は、現代の私たちに古典文学への理解を深めさせ、そして、学問への飽くなき探究心と、人生を楽しむ生き方を教えてくれます。彼の功績は、山岸徳平文庫という形で、そして、彼の残した数々の著作を通して、これからも長く語り継がれていくでしょう。彼の生涯は、まさに「文武両道」を体現した人生であったと言えるでしょう。

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