中核派書記長内ゲバ殺人事件

中核派書記長内ゲバ殺人事件：1975年、埼玉県川口市で起きた悲劇

1975年3月14日早朝、埼玉県川口市のアパートで、革命的共産主義者同盟全国委員会（中核派）書記長の本多延嘉氏が殺害される事件が発生しました。この事件は、中核派と日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派（革マル派）という、当時の過激派組織間の抗争、いわゆる「内ゲバ」の悲惨な結末として広く知られています。

事件当日の午前6時頃、アパートの住民からの通報により警察が現場に駆けつけました。発見された本多氏は、3畳間に倒れており、全身に鉄パイプやハンマー、斧などで受けたと思われる激しい打撃の痕がありました。頭蓋骨骨折と脳内出血が死因と断定されました。現場には血痕が飛び散り、ガラス戸が破壊されていました。

事件直後、警視庁記者クラブに「中核派書記長本多延嘉を襲った」という電話が匿名でかかってきました。犯行声明には、革マル派による犯行であることが示唆されており、その後、指紋などの証拠から革マル派の関与が強く疑われるようになりました。さらに、アパートの電話線が切断されていたことや、本多氏とは別の名義で部屋が借りられていたことなど、計画的な犯行であることがうかがえました。

革マル派議長・黒田寛一氏によれば、本多氏の動向把握には、使用車両特定に成功したことが大きく貢献したとされています。革マル派は同日夕方に記者会見を開き、犯行声明を発表しました。声明では、過去の革マル派関係者への襲撃への報復であると主張しました。

この事件を理解するためには、中核派と革マル派の長く激しい抗争の歴史を理解する必要があります。両派は、革マル派が1972年に「内ゲバ勝利宣言」を発表するなど、激しい対立を繰り返していました。中核派は革マル派に対し「宣戦布告」とも言うべき対抗姿勢をとり、双方による内ゲバ抗争は繰り返されていました。東京教育大学におけるリンチ殺人事件を契機に、革マル派は内ゲバ専門部隊を創設、組織的な内ゲバを強化していました。

本多氏殺害事件の後も、両派の抗争は収まるどころか激化しました。中核派は報復を宣言し、1975年だけで14人の革マル派活動家を殺害したとされています。革マル派は3月28日、「内ゲバ停止宣言」を発表しましたが、これは事件発生後のことであり、その後の抗争の終結には繋がりませんでした。

中核派書記長内ゲバ殺人事件は、日本の高度経済成長期における過激派運動の暗部を象徴する事件です。冷戦構造や学生運動の高まり、社会不安などが複雑に絡み合い、過激な思想対立と暴力行為を招いた背景を理解することは、現代社会においても重要な意味を持ちます。この事件は、単なる組織間の抗争ではなく、当時の社会情勢が反映された、複雑で悲しい事件として記憶されるべきでしょう。

参考文献

立花隆『中核VS革マル』 上、講談社〈講談社文庫〉、1983年1月15日
「16. 中核派書記長内ゲバ殺人事件」『過激派事件簿40年史』立花書房〈別冊治安フォーラム〉、2001年8月20日

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