中田功XP

中田功XP：居飛車穴熊を攻略する革新的な三間飛車戦法

中田功XPは、将棋における三間飛車戦法の一種であり、特に居飛車穴熊対策として高い評価を得ています。プロ棋士である中田功氏によって考案され、島朗氏の著書『島ノート 振り飛車編』(2002年)で紹介されたことで広く知られるようになりました。この戦法は、Windows XPの最新バージョンにちなんで命名されたものであり、『島ノート』で初めて「中田功XP」という名称が用いられました。

居飛車穴熊への有効な対策

居飛車穴熊は、その堅牢な守りと遠距離からの攻撃によって、振り飛車戦法、特に三間飛車にとって長らく克服困難な相手とされてきました。従来の三間飛車が美濃囲いを構築してから攻め合う展開では、穴熊の堅さが際立ち、振り飛車側は苦戦を強いられることが多々ありました。四間飛車では「藤井システム」といった穴熊対策が開発されていましたが、三間飛車においては有効な対策がなかなか見出だせませんでした。

中田功XPは、この状況を一変させる革新的な戦法です。従来の三間飛車とは異なり、玉を美濃囲いに収めずに3九（後手番の場合は6二）に留める点が大きな特徴です。この独特の玉の配置によって、端攻めと角行の利きを効果的に活用し、穴熊の堅固な守りを崩していくことを目指します。玉を美濃囲いに収めないことで、駒組みの手数を削減し、素早く攻撃態勢を構築できるという利点もあります。さらに、端攻めによる反動を考慮し、自玉を戦場から遠ざけておくという戦略的な意味合いも持っています。

島朗氏は著書の中で、中田功XPを「居飛車穴熊さえ克服できれば、三間飛車は最強の戦法になりうる」「三間飛車で居飛車穴熊を粉砕する画期的な新戦法」と高く評価しており、その有効性を示しています。

中田功XPとコーヤン流

中田功氏の三間飛車は、「コーヤン流」と呼ばれることもあります。これは、中田氏の棋風を反映した三間飛車全般を指す場合が多く、「中田功XP」という名称は島朗氏の著書における造語であり、必ずしも広く用いられているわけではありません。コーヤン流は、超急戦から持久戦まで幅広い変化に対応できる柔軟性を持ち、穴熊崩しだけにとどまらない多様な戦術を包含しています。

プロ棋戦における応用と発展

プロ棋戦においても、中田功XPは重要な戦法として用いられています。第31期竜王戦では藤井聡太四段が後手中田功XP対策として36手目5五歩という新手を披露しましたが、その後、中田功八段が第45期棋王戦予選で新手△6二銀を披露し勝利を収めました。現在では、36手目5五歩は用いられていません。中田功XPは、今後も進化を続け、将棋界に大きな影響を与え続ける戦法と言えるでしょう。

参考文献

島朗『島ノート 振り飛車編』（講談社、2002年）
中田功『コーヤン流三間飛車の極意 持久戦編』（毎日コミュニケーションズ、2003年）
中田功『コーヤン流三間飛車（実戦編）』（毎日コミュニケーションズ、2004年）
勝又清和『最新戦法の話』（浅川書房、2007年）

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