中田鉄治

中田 鉄治（なかだ てつじ）

1926年（大正15年）4月1日生まれ、2003年（平成15年）9月10日没。日本の政治家で、北海道夕張市の市政を1979年（昭和54年）から2003年（平成15年）まで、実に6期24年にわたって担った。

経歴

秋田県で生を受けた中田鉄治は、生後まもなく現在の夕張市へと移り住んだ。高等小学校を卒業後、北海道殖産銀行や北海道炭礦汽船といった企業で事務職を経験。終戦の年である1945年（昭和20年）秋には、夕張市役所の職員となった。

市役所では、企画室長時代の1970年（昭和45年）に「石炭産業に将来性はない」という認識のもと、新たな産業の誘致を提唱するなど、早い段階から基幹産業であった石炭産業の衰退に対する強い危機感を抱いていた。助役を務めていた1977年（昭和52年）には、「炭鉱から観光へ」というスローガンを打ち出し、「石炭の歴史村」構想の端緒を開くなど、観光による地域活性化の道筋を探り始める。1971年（昭和46年）からは2期8年にわたり夕張市助役を務めた。

市長時代と財政運営

1979年（昭和54年）に夕張市長に就任。しかし、就任直後の1981年（昭和56年）10月17日に発生した北炭夕張新鉱でのガス突出事故は、主要炭鉱の一つであった同鉱の翌年10月9日の閉山に繋がり、石炭産業の衰退は予想を上回る速度で進行した。大規模な炭鉱経営を行っていた企業は、従業員向けの生活インフラ（住宅、水道、病院など）を整備していたが、閉山時にこれらの施設を市の負担として残していったため、夕張市は約583億円という巨額の後処理費用を背負うこととなった。

このような厳しい状況下で、中田は「夕張は国の石炭政策転換の犠牲になったのだから、国が振興策に責任を持つべきだ」と主張し、国の閉山対策資金を積極的に引き出して様々な事業を展開したとされる。その際、「自治体は破綻しない」「借金には国の保証がある」といった発言があったと伝えられている。

こうした考えがあったためか、1981年（昭和56年）に財政再建団体への転落寸前まで財政状況が悪化し、自治省（現在の総務省）からも厳しい財政緊縮指導を受けていたにもかかわらず、中田市政は逆の方向へと進んだ。1982年（昭和57年）12月には市議会議員の報酬を引き上げ、1983年（昭和58年）度には前年度比17%増の大胆な積極予算を組むなどした。また、この頃から第三セクターや公営企業に金融機関から借り入れさせ、市が債務保証する形で市債発行を回避する、いわゆる「ヤミ起債」的な手法を公式会計外で活用するようになる。これらの結果、2001年（平成13年）には既に130億円を超える実質的な赤字を抱え込んでいた。

観光振興とその結果

巨額の負債膨張の要因の一つともなった観光事業を「炭鉱から観光へ」のスローガンのもと推進したが、その根本的な動機は、観光そのものを主力産業とすることだけではなかったとされている。企画室長時代に新たな産業誘致を進めた際、誘致対象の企業が夕張を視察し、「こんな汚い街に従業員を住まわせることはできない」と誘致を断られる経験が相次いだことから、観光客が集まるような魅力的な街づくりを行うことで、長期的な視点で企業誘致につなげる戦略として観光振興に着手したという。

炭鉱閉山後、夕張の主要産業が失われた状況下で、「分不相応と思えるほどの積極的な投資をしなければ、夕張市は再生しない」という持論に基づき、観光振興を目的に大規模な投資を行った。具体的には、テーマパーク「石炭の歴史村」に関連する施設の建設や、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭のようなイベントの開催を積極的に行った。

主な観光投資プロジェクトには以下がある。

1980年（昭和55年）: 夕張市石炭博物館（約14億8300万円）
1983年（昭和58年）: 石炭の歴史村（遊園地、約55億円）
1985年（昭和60年）: めろん城（約6億5000万円）
1988年（昭和63年）: ロボット大科学館（約8億5000万円）
* 2002年（平成14年）: マウントレースイスキーリゾート買収（松下興産より、約26億円）

しかし、これらの観光振興策は計画の甘さもあり、かつての石炭産業のような収益をもたらすことはできなかった。人口流出も相まって、結果的には市の財政状況を著しく悪化させることになった。

退任と晩年、そして市の破綻

2003年（平成15年）4月、夕張市長を退任。同年9月10日午後1時8分、肝細胞癌のため77歳で死去した。死没に際し、勲三等瑞宝章が追贈され、従五位に叙された。

中田の退任から3年後の2006年（平成18年）6月20日、後任の後藤健二市長は財政再建団体の申請を行うことを表明。夕張市の財政は公式に破綻した。

その他の活動

政治活動の傍ら、芸能分野にも関与したことがある。北海道でロケが行われたテレビドラマ『西部警察 PART-III』の最終回に医師役で出演。また、夕張市が舞台となった特撮番組『仮面ライダーBLACK』（1988年）の特定の回や劇場版映画には、夕張市長役で特別出演している。これらの作品には「石炭の歴史村」などの施設も登場した。さらに、1985年に発表された楽曲『めろん酒』では作詞を手がけている。映画『北の零年』の制作においては、夕張をロケ地に誘致することに尽力したとされ、撮影拠点が夕張に置かれた。

中田鉄治の市政は、石炭産業の衰退という困難な状況下で地域の再生を目指し、大規模な観光開発に活路を見出そうとした挑戦であった。しかし、その積極的な財政運営と投資は多額の負債を生み、後任の市長の代で市の財政破綻という厳しい現実を迎えることとなった。その功績と結果については、今日に至るまで様々な議論がなされている。

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