中竜鉱山

中竜鉱山の歴史と変遷

福井県大野市（旧和泉村）に位置する中竜鉱山は、長い歴史を持つ鉱山です。その歴史は古く、13世紀には銀の採掘が行われていた記録が残されています。その後、近代に入ると日本亜鉛鉱業が経営を引き継ぎ、亜鉛鉱山として盛況を極めました。亜鉛の他、モリブデンなどのレアメタルも産出され、地域経済に貢献しました。

鉱山はスカルン鉱床と気成鉱床という二つのタイプの鉱床から構成されており、地質学的にも貴重な存在でした。最盛期には多くの鉱山労働者が働き、活気に満ちた場所であったと想像されます。しかし、1936年2月2日には、鉱山周辺で大規模な雪崩が発生し、17名もの犠牲者が出るという悲惨な事故も起こりました。この事故は、鉱山を取り巻く自然環境の厳しさを改めて認識させる出来事となりました。

1987年、円高による採算悪化が経営を圧迫し、中竜鉱山は閉山を余儀なくされました。閉山後、鉱山の跡地は様々な形で再利用されました。その一つが、体験型鉱物博物館である「アドベンチャーランド中竜」です。専用バスに乗り、地下120mまで坑道を巡るという、日本では珍しい博物館として多くの鉱物愛好家や地質学を学ぶ学生を魅了しました。坑道へ向かうバスの車窓からは、当時の鉱山関連の建物が多く残されている様子を見ることができ、閉山当時の状況を偲ぶことができました。興味深いことに、資源の枯渇が閉山の理由ではなかったため、坑道内には多くの鉱石がそのまま残されている状態でした。調査によると、閉山時点で十年分の鉱石が残されていたとのことです。しかし、来場者数の減少により、2006年11月30日をもって営業を終了しました。

鉱山関連施設の再利用は、博物館だけではありません。社宅跡地と福利厚生施設は、DAINOUスポーツランド（IZUMIクロスカントリースキー場）として生まれ変わり、自然豊かな環境を生かしたレクリエーション施設として活用されています。さらに、大野市の酒造メーカーが、かつての坑道を貯蔵庫として利用しており、鉱山の歴史が現代にも引き継がれている様子を垣間見ることができます。

中竜鉱山へのアクセスは、九頭竜湖駅から大野市営バス中竜線（一部時間帯を除きデマンド運行）を利用し、中竜バス停下車となります。かつて賑わいを見せていた中竜鉱山は、現在は静寂に包まれていますが、その歴史は、現在も大野市の風景の中に息づいています。鉱山跡地に残された様々な施設は、この地の歴史と自然を物語る貴重な遺産と言えるでしょう。閉山から時が経ちますが、中竜鉱山の歴史は、多くの人々の記憶の中に、そして地域の未来へと受け継がれていくことでしょう。

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