中野真博

中野 真博（なかの まさひろ）氏は、1976年6月8日に石川県で生まれた元野球選手、そして現在は野球指導者として活躍しています。右投げ右打ちの投手でした。

高校時代

石川県の強豪、金沢高校に進学。1学年上には後に大学でも先輩となる高須洋介氏がいました。1年生の秋、北信越地区大会では福井商業高校の横山竜士投手（後に広島東洋カープ）と投げ合うなど、3試合に先発登板。いずれの試合も相手打線をわずか4安打以下に抑える安定した投球を披露し、チームを優勝に導きました。この活躍が評価され、チームは翌春の第65回選抜高等学校野球大会への出場を果たします。

2年生になると、夏の県大会でさらに存在感を増します。登板した40イニングで被安打23、失点7という安定感抜群のピッチングを見せ、打撃面でも打率.615を記録するなど投打にわたってチームを牽引。2季連続となる夏の甲子園、第75回全国高等学校野球選手権大会への出場を決めました。本大会では初戦で山村宏樹投手（後に広島東洋カープ）を擁する甲府工業高校と対戦しましたが、惜しくも敗退しました。

この頃、走り込みによる下半身強化に励んだことで、球速が向上し、決め球であるスライダーの威力も増しました。2年生の秋には北信越地区大会で登板した全試合を完投し、チームを2年連続となる地区優勝に導きました。そして3年生の春、第66回選抜高等学校野球大会に出場します。

この大会の1回戦、江の川高校（現：石見智翠館高校）戦で、中野氏は野球史に残る快挙を達成します。相手打線を一人もランナーを出すことなく完璧に抑え込み、センバツ史上2人目となる完全試合を達成したのです。これは、1978年の第50回大会で松本稔投手（前橋高校）が記録して以来、実に16年ぶりの偉業でした。この試合での投球数はわずか99球、スコアは3対0での勝利でした。本人は試合中、捕手のリードに身を任せて投げ続け、8回が終わるまで完全試合という記録を意識していなかったと振り返っています。試合後のインタビューでは「もっと大げさに喜んでも良かったかな」と語るなど、快挙にも自然体な一面を見せました。

続く2回戦では、優勝候補の一角であったPL学園高校と対戦。先頭打者の大村三郎氏（後に千葉ロッテマリーンズほか）に安打を許し、惜しくも連続イニング無安打記録は途切れましたが、この試合でも12個の三振を奪うなど力投を見せました。しかし、打線が相手投手を打ち崩せず、0対4で敗れました。3年生の夏は、県大会決勝で当時1年生ながらエースを務めていた山本省吾投手（後に横浜ベイスターズほか）擁する星稜高校に敗れ、残念ながら4季連続となる全国大会出場は叶いませんでした。

高校卒業時には、プロ野球の6球団から入団の誘いがあったものの、中野氏は大学進学の道を選びます。

大学時代

青山学院大学に進学。ここでも高校からの先輩である高須洋介氏や、後にプロで活躍する坪井智哉氏、澤崎俊和氏（後に広島東洋カープ）、倉野信次氏（後に福岡ダイエーホークスほか）らがチームの主力として活躍していました。中野氏は2年生となった1996年にベンチ入りを果たします。3年生からはチームのエースを任されるようになりますが、後輩には石川雅規投手（現：東京ヤクルトスワローズ）らが台頭してきたこともあり、大学での通算勝利数は6勝にとどまりました。

社会人野球時代

大学卒業後、先輩である坪井智哉氏の勧めもあり、社会人野球の強豪、東芝に入社します。入社4年目の2002年頃からは、須田喜照氏、銭場一浩氏、香月良太氏（後に大阪近鉄バファローズほか）といったチームの主要投手陣に次ぐ存在となり、翌2003年には銭場氏とともに投手陣の中心選手として活躍しました。

しかし、2007年4月には練習試合中に相手打者の打球が右足を直撃。骨折という全治6ヶ月の重傷を負うアクシデントに見舞われました。怪我からの復帰を経て、社会人野球在籍10年目となる2008年には、都市対抗野球大会で日産自動車の補強選手に選出され、念願の東京ドームでの初登板を果たしました。

2009年シーズン限りで現役を引退。その後は東芝の投手コーチに就任し、後進の指導にあたりました。しかし、東芝が経営再建を進める過程で野球部の体制変更があり、2017年末をもって野球部を離れることになります。野球部退部後は社業に専念し、営業職などを務めていました。

指導者として母校へ

2019年4月1日、中野氏は自身の母校である青山学院大学の投手コーチに就任しました。高校時代にセンバツで歴史的な記録を達成し、大学、社会人野球で経験を積んだ中野氏が、母校の投手陣育成に力を注いでいます。

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