中野種一郎

中野 種一郎（なかの たねいちろう）

日本の政治家、実業家。明治9年（1876年）9月20日に京都府乙訓郡調子村（現在の長岡京市にあたる地域）で生まれ、昭和49年（1974年）1月24日に97歳でその生涯を閉じた。伏見町長、伏見市長として行政に携わった後、国政に進出して衆議院議員を務めたほか、戦後は京都放送の会長、京都商工会議所の会頭、日本商工会議所の副会頭、関西経済連合会の副会長など、京都を中心とした経済界の要職を歴任し、地域の振興に多大な貢献をした人物である。

生い立ちと地方政界での歩み

現在の長岡京市で生まれた中野種一郎は、佛教専門学校（現在の佛教大学）で学んだ後、家業である酒造業に従事した。明治41年（1908年）、紀伊郡会議員に初当選し、以後4期にわたってその職を務めた。また、明治42年（1909年）3月からは伏見町会議員としても活動を開始し、こちらも3期務めた。大正3年（1914年）には郡会議長に就任し、大正12年（1923年）に郡制が廃止されるまで議員と議長を兼任した。

伏見町の行政を担う

大正15年（1926年）8月3日、伏見町長に就任し、地域の行政を指揮した。昭和4年（1929年）5月1日に伏見町が市政へと移行するにあたり、市長臨時代理者に就任。同月18日には初代伏見市長に正式に選出された。しかし、伏見市は昭和6年（1931年）4月1日に京都市に編入されることとなり、独立した市長としての任期は短期間に終わった。

京都市会・京都府会、そして国政へ

伏見市が京都市に編入された後も、中野種一郎は政治活動を続けた。昭和6年（1931年）6月22日に行われた京都市会議員の増員選挙において、伏見区選挙区から立憲政友会の公認候補として立候補し、初当選を果たした。同年9月25日には、京都府会議員選挙でも京都市伏見区選挙区から当選。地方議会での活動を続けた。

そして、昭和7年（1932年）2月に行われた第18回衆議院議員総選挙に、京都府第2区から立憲政友会公認候補として出馬し、当選。これにより国政への進出を果たした。衆議院議員当選に伴い、同年3月9日には京都府議会議員を辞職した。京都市議会議員としては、昭和8年（1933年）に再選を果たしたが、昭和11年（1936年）6月13日には市議会議員も辞職している。

戦後の経済界での指導力

第二次世界大戦終結後、中野種一郎は一時期、日本自由党の京都府連顧問を務めたが、後に特定の政党に属さない無党派となった。昭和20年（1945年）10月には、宝酒造の監査役に就任し、実業界での活動を本格化させた。

特に注目されるのは、戦後復興期から高度経済成長期にかけての京都経済界における指導的役割である。昭和21年（1946年）10月に京都商工会議所の会頭に就任すると、地域の産業・商業振興に尽力した。昭和22年（1947年）には関西経済連合会の副会長、昭和26年（1951年）には日本商工会議所の副会頭にも就任するなど、関西および日本の経済団体においても重要な地位を占めた。また、昭和26年（1951年）には京都放送の取締役会長、昭和34年（1959年）には京都産業観光センターの取締役会長を務めるなど、メディアや観光といった多岐にわたる分野でその手腕を発揮した。昭和39年（1964年）には日本WHO協会の会長にも就任している。

栄典と顕彰

長年にわたる公職および経済界での貢献に対して、多くの栄典が贈られた。昭和31年（1956年）に藍綬褒章を受章。昭和34年（1959年）には紺綬褒章と藍綬褒章飾版を受章した。昭和39年（1964年）には勲三等旭日中綬章に輝き、昭和45年（1970年）には京都市名誉市民の称号が贈られた。さらに、昭和46年（1971年）には勲二等瑞宝章を受章している。没後の昭和49年（1974年）には正四位が追贈された。

家族

次男である中野武雄も政治家となり、衆議院議員を務めた。

中野種一郎は、地方自治から国政、そして戦後の経済復興と発展に至るまで、約70年にも及ぶその活動期間を通じて、特に京都の政財界において極めて大きな足跡を残した人物として記憶されている。

もう一度検索