中食

中食（なかしょく）とは

中食とは、飲食店やスーパーマーケットなどで調理された食品を、自宅やオフィスなど、家庭内で食べる食事の形態を指す言葉です。外食（飲食店で食事をする）と内食（自宅で調理して食べる）の中間に位置づけられる概念で、テイクアウトやデリバリーなどが該当します。

中食の定義

一般的に、中食とは「調理済みで、持ち帰ってすぐに食べられる食品」を指します。スーパーマーケットやデパ地下で販売されているお惣菜、コンビニエンスストアのお弁当などが代表例です。また、これらの食品を消費する行為自体も中食と呼ばれます。

ピザチェーンのように、注文を受けて配達や持ち帰りを基本とする店舗や、食材宅配サービスの中には調理済みの弁当を宅配するサービスも含まれ、中食を配達する形態と言えるでしょう。

中食の歴史

「中食」という言葉が登場したのは、1980年代ごろだと考えられています。これは、働く女性の増加やコンビニエンスストアの普及と同時期です。日本では、婚姻率の低下や高齢化により単身世帯が増加し、食事を一人で摂る「個食化・孤食化」が進みました。これにより、手軽に購入できる弁当や惣菜などの需要が高まり、中食市場が拡大しました。

江戸時代には、屋台の天ぷらや蕎麦の出前など、現在の中食につながるような食文化が存在していました。しかし、当時は家庭で調理することが一般的であり、中食はあくまでも一部の人の利用に留まっていました。1980年代以降、核家族化や単身世帯の増加により、家庭での調理機会は減少し、手軽な中食へのニーズが高まりました。また、1990年代以降の経済不況も、高額な外食を避ける動きを加速させ、中食市場の拡大を後押ししました。

中食の市場規模

中食市場は、2000年代以降に急速な成長を遂げました。2003年には、中食産業が外食[[産業]]の4分の1の市場規模に達したとされています。2007年には、市場規模は約6兆5千億円にまで成長し、この10年間で25％も伸びました。2010年時点での中食製品の販売チャネル別割合は、惣菜専門店が最も多く32.7％、次いでコンビニエンスストアが27.1％、量販店・食品スーパーが15.6％となっています。

今後も、日本では単身世帯や夫婦のみの世帯が増加し続ける見込みです。そのため、家事負担を軽減する目的で中食を選ぶ人がさらに増え、中食市場は拡大すると予測されています。

中食という言葉の由来

日本語の「中食（ちゅうじき）」は、本来は「昼食」を意味する言葉でした。古代の日本では、一日二食が一般的で、朝食と夕食の間に摂る間食を「中食（ちゅうじき）」と呼んでいました。しかし、食生活の豊かさとともに一日三食が一般的になると、昼に摂る食事は「昼食（ちゅうじき）」と表記されるようになりました。明治時代以降には、漢音読みの「ちゅうしょく」という読み方が一般的になりました。現在使用されている「中食（なかしょく）」という言葉は、これらの歴史的な変遷を経て生まれた新しい言葉です。

海外における中食

アメリカ合衆国では、中食に類似する概念として、ホーム・ミール・リプレイスメント（HMR）があります。HMRは、スーパーマーケットなどで販売されている調理済みの食品やテイクアウト、デリバリーなどを指し、家庭での調理を代替するものです。もともと「ホーム・ミール・リプレイスメント」は、アメリカ合衆国のテイクアウトチェーンであるボストンマーケットが1995年から家庭での食事作りを代行するサービスのブランドとして用いていた名称です。

日本語の「中食」の英語訳として「HMR」が用いられることもありますが、厳密にはHMRは内食、中食、外食を問わず用いられる概念であり、日本語の「中食」と同義ではありません。

まとめ

中食は、現代社会において重要な役割を担う食事形態です。単身世帯や高齢者世帯の増加、女性の社会進出など、社会構造の変化とともに、中食のニーズはますます高まっています。今後も中食市場は拡大し、私たちの食生活に欠かせないものとなるでしょう。

参考文献

高橋麻美『業界の最新常識 よくわかる中食業界』日本実業出版社、2006年4月。
福井晋『図解入門業界研究 最新外食業界の動向とカラクリがよーくわかる本』秀和システム、2006年7月。
堀内幹夫『魚で食育する本 スーパーマーケットだからできる』商業界（食育シリーズ1）、2007年7月。
安久鉃兵『唐揚げのすべて うんちく・レシピ・美味しい店』」中央公論新社（中公新書ラクレ）、2015年7月。

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