中馬兼四

中馬兼四の生涯と業績

中馬兼四（ちゅうま けんし）は、1917年に鹿児島県で生まれ、1942年にシドニー湾攻撃で戦死した日本の海軍軍人です。彼は海軍の特殊潜航艇「甲標的」の艇長として知られ、太平洋戦争における重要なミッションに従事しました。最終的に彼は海軍中佐の位階に上がり、正六位を賜りました。彼の生涯は短かったものの、特に彼が果たした役割は日本海軍の歴史に刻まれています。

出身と教育

中馬は鹿児島県薩摩郡上東郷村大字鳥丸で生まれ、幼少期から優れた運動能力を持つ子供として知られていました。鹿児島県立川内中学校（現在、鹿児島県立川内高等学校）を卒業後、海軍兵学校へ進学しました。彼は海兵66期に所属し、その年の卒業生の中で143名が戦死するという悲劇的な戦死率（65.2%）を乗り越え、海軍の道を歩みました。彼の同級生には後にシドニー湾攻撃で戦死する松尾敬宇や、マダガスカル攻撃で命を落とした秋枝三郎がいます。

軍歴とシドニー湾攻撃への布石

1939年6月、中馬は海軍少尉に任官され、潜水艦砲術長としての経験を経た後、特殊潜航艇の搭乗員として訓練を受けました。彼は水上機母艦「千代田」に配属され、特殊潜航艇の運用訓練を受けました。当初、真珠湾攻撃において「特潜」の役割は消極的であり、結果として全員が生還できない事態となりましたが、この教訓をもとに攻撃戦術が改善され、特潜による第二次攻撃が決定されることになりました。

シドニー湾攻撃の実施

1942年5月18日、中馬は特殊潜航艇に乗り込み、母潜「伊27」に搭載され出撃しました。彼の部隊を指揮するのは、過去の真珠湾攻撃でも同じ「特潜」部隊を指揮した佐々木半九大佐でした。シドニー湾に対する攻撃目標が定められた後、中馬は湾口で出撃しました。入港するフェリーを追尾し無事に潜入した彼の艇でしたが、防潜網に絡まり、自由を失ってしまいます。最終的に、中馬と艇附の大森猛一等兵曹は自爆装置によって命を絶ちました。

遺体の帰国とその後

中馬と大森の遺体は、数週間後に回収され、豪州海軍によって海軍式で葬儀が行われました。彼らの遺骨は戦時交換を経て日本に戻り、1943年3月に呉で合同葬儀が行われました。これにより、中馬の英雄的な行為は多くの人々に記憶されることとなりました。

人物像

中馬は温厚で円満な性格を持ち、出撃前には同郷の先輩に敬意を表し祈りを捧げました。また、彼が残した言葉には、親しい仲間や弟のために尽くそうとする優しさが表れています。彼の貯金の大半を艇附の家族に、残りは弟の学資にあてるよう言い遺したことからも、その人間性が伺えます。

最後に

中馬兼四の物語は、日本海軍の一員としての誇りとその短命を悲しむ多くの人々の心に残っています。彼の勇敢な行動や志は、今もなお多くの人々に影響を与え続けています。彼のような英雄たちの存在は、戦争の真実と向き合わせ、平和の重要性を再認識させるものとなることでしょう。

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