丸田昭三

丸田 昭三

丸田 昭三（まるた しょうぞう）氏は、1928年に生まれた日本の作曲家であり、音楽理論家としても多大な貢献をされました。日本の現代音楽史において、教育者および創作活動の両面からその足跡を残しています。

その音楽的基盤は、東京藝術大学での学びによって築かれました。特に、当時の日本の作曲界を牽引し、多くの後進を育成した石桁真礼生（いしげた まれお）氏に師事したことは、丸田氏の作曲家としての方向性を決定づける上で重要な経験となりました。石桁門下で、厳格な対位法や和声、そして独自の作曲技法を深く習得したと考えられます。

国内での研鑽を積んだ後、さらなる学識と技術の深化を目指し、1958年から1960年にかけてドイツへと渡りました。ミュンヘン音楽大学にて、著名な作曲家であるハラルド・ゲンツマー（Harald Genzmer, 1909-2007）に師事しました。ゲンツマーはパウル・ヒンデミットの弟子としても知られ、新古典主義的な手法を用いた作品を数多く手がけていました。このミュンヘンでの期間は、異文化の音楽に触れ、自身の音楽語法をより豊かに洗練させる貴重な機会となったことでしょう。海外での学びは、その後の丸田氏の作曲活動や音楽理論研究に新たな視点をもたらしました。

作曲家としての活動としては、当時の日本の現代音楽を巡る動きの中で、作曲グループ「環」の会員として積極的に作品を発表しました。「環」は、日本の作曲家たちが互いに刺激し合い、新たな音楽の創造を目指して設立されたグループの一つであり、丸田氏もその一員として現代音楽の発展に寄与しました。

丸田氏の代表的な作品としては、弦楽四重奏のために書かれた「イントロダクションとパッサカリア」が挙げられます。これは、バロック時代の形式であるパッサカリアを現代的な手法で再構築した意欲的な作品であり、その構成力と響きにおいて高い評価を受けています。また、ピアノのための「ソナチネ」など、様々な楽器のための作品も手掛けており、その創作活動は多岐にわたります。

作曲家としての才能は、コンクールでの受賞によっても認められています。1955年には、日本の主要な音楽コンクールの一つである第24回日本音楽コンクールの作曲部門（第1部、管弦楽曲）において3位に入賞を果たしました。これは、若手作曲家としての地位を確立する重要な出来事となりました。

作曲活動と並行して、丸田氏は音楽理論家、特に音楽教育者としても特筆すべき功績を残しています。日本の音楽大学において、和声学の教育は音楽理論の根幹をなすものですが、丸田氏は広く用いられている、いわゆる「芸大和声」の教科書の執筆陣の一人として、その整備と普及に貢献しました。この教科書は、長年にわたり多くの音楽学生にとって和声学習のバイブルとして親しまれており、日本の音楽教育の水準向上に不可欠な役割を果たしています。共著者には、師である石桁真礼生氏をはじめ、末吉保雄氏、飯田隆氏、金光威和雄氏、飯沼信義氏といった、日本の主要な音楽理論家、作曲家たちが名を連ねています。

丸田氏が関わった出版物には、以下のようなものがあります。

収録作品

桐朋学園子供のための音楽教室『こどものための現代ピアノ曲集 1（世界音楽全集）』 春秋社、1967年3月31日。ISBN 978-4393914311
作曲「ソナチネ 1.アレグロ・モデラート」が収録されています。

著書（共著）

* 石桁真礼生、末吉保雄、丸田昭三、飯田隆、金光威和雄、飯沼信義『楽典―理論と実習』音楽之友社、1998年12月10日。

丸田昭三氏は、作曲家として個性的な作品を生み出す一方、音楽理論家として日本の音楽教育の基礎を支える教科書の執筆に携わるなど、創作と教育の両面から日本の音楽界に確かな足跡を残した人物と言えるでしょう。その多角的な活動は、多くの音楽家に影響を与え続けています。

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