丸部明麻呂

丸部明麻呂（わにべ の あきまろ）は、平安時代前期に活躍した官人です。弘仁10年（819年）に生まれ、没年は不明です。姓は臣（おみ）で、外従八位上の丸部己西成（わにべ の きにしげ）を父に持ちます。官位は従四位上に至り、讃岐国三野郡の大領を務めました。

丸部氏は、春日氏の一族であり、明麻呂は18歳で平安京に入り、朝廷に官人として仕え始めました。長年にわたる勤務の中で多くの功績を上げたとされています。その後、讃岐国三野郡の大領に任ぜられますが、彼はこの官職を父に譲り、子としての道を守り、両親への孝養を尽くすことを選びました。これは、当時の社会において非常に珍しく、また高く評価される行動でした。

明麻呂の住居は、両親の家から10里（約40キロメートル）離れていましたが、彼は毎日朝晩必ず両親を訪れ、その世話を怠りませんでした。この献身的な親孝行ぶりは、中国の古代の賢人である曾参（そうしん）にも匹敵すると称えられました。曾参は、孔子の弟子であり、その孝行ぶりで知られています。

嘉祥元年（848年）、明麻呂の並外れた孝行は、ついに朝廷の耳にも届き、讃岐国国司から正式な推薦を受けました。この推薦に基づき、明麻呂は勅命により三階の昇叙を受け、さらに彼の戸内の田祖（でんそ：田畑に課せられる税）は終生免除されることとなりました。この措置は、朝廷が明麻呂の孝行を高く評価し、その行動を社会に広めようとした証左と言えるでしょう。

明麻呂の生涯は、官人としての功績と並び、親孝行を重んじる日本の伝統的な価値観を体現するものであり、後世に大きな影響を与えました。彼の物語は、家族を大切にし、親に尽くすことの重要性を教えてくれます。このように、丸部明麻呂は、単なる歴史上の人物としてだけでなく、道徳的な模範としても語り継がれるべき存在です。

参考文献として、太田亮著『姓氏家系大辞典』と森田悌著『続日本後紀 （下）』が挙げられます。これらの文献は、丸部明麻呂やその一族に関するより詳細な情報を提供しており、彼の生涯を理解する上で貴重な資料となります。

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