丹後内侍

丹後内侍（たんごのないし）

丹後内侍（生没年未詳）は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて生きた女性です。比企掃部允と比企尼の長女として生まれ、鎌倉幕府の御家人である安達盛長の妻となりました。彼女は安達景盛、安達時長、島津忠久らの母としても知られています。

生涯

『吉見系図』によれば、丹後内侍は京の二条院に女房として仕え、「無双の歌人」と称されるほどの才能を持っていました。島津忠久を住吉神社で出産した後、彼女は惟宗広言と再婚しますが、後に離縁し、関東へ下って安達盛長に嫁いだと言われています。安達盛長は源頼朝が流人であった時代からの側近であり、丹後内侍との婚姻が縁で頼朝に仕えるようになったと考えられています。ちなみに、二条院には源頼政の娘である二条院讃岐も女房として出仕していました。

『吾妻鏡』には、養和2年（1182年）3月9日、源頼朝の妻である北条政子が嫡男・頼家を懐妊した際、丹後内侍が着帯の儀式で給仕を務めたという記述があります。また、彼女の2人の妹（次女と三女）は頼家の乳母となっています。

文治2年（1186年）6月10日、丹後内侍が病に倒れた際、頼朝は供を2人だけ連れて、密かに盛長の屋敷を見舞ったと記録されています。頼朝は彼女の回復を願って願掛けを行い、数日後に丹後内侍が回復すると安堵したと伝えられています。

このように、丹後内侍は源頼朝に非常に近い女性であったため、後年、彼女の子である景盛が頼朝の子であるという風説が広まったり（『保暦間記』）、島津氏が祖である島津忠久を彼女と頼朝の子であると主張するなど、彼女を母とする二つの頼朝落胤説が存在します。しかし、『吾妻鏡』をはじめとする当時の史料には、これらの説を裏付ける記述は見当たりません。

脚注

注釈

特になし

出典

福島金治　『安達泰盛と鎌倉幕府 - 霜月騒動とその周辺』　有隣新書、2006年。

関連作品

小説

篠綾子『星月夜の鬼子母神』（集英社文庫、2021年）ISBN 978-4-08-744313-4

テレビドラマ

『草燃える』（1979年、NHK大河ドラマ、演：木村翠、役名：ふき）

関連項目

比企氏

もう一度検索