比企尼

比企尼（ひきのあま）

比企尼（生没年不詳）は、平安時代末期に生きた女性で、源頼朝の乳母として歴史に名を残しています。武蔵国比企郡の代官であった比企掃部允の妻であり、比企氏は藤原秀郷の流れを汲む一族でした。

生涯

詳しい出自や生没年は不明ですが、比企尼は源頼朝が伊豆国へ流罪となった後、献身的に彼を支え続けました。平治元年（1159年）の平治の乱で父・源義朝が敗れると、14歳の頼朝は伊豆へ配流されます。比企尼は夫と共に京から領地へ下り、治承4年（1180年）秋までの約20年間、頼朝への仕送りを続けたと『吾妻鏡』に記されています。

比企尼には3人の娘がおり、彼女たちの婚姻を通じて比企氏は勢力を拡大していきます。

長女・丹後内侍：惟宗広言との間に島津忠久を産んだ後、安達盛長に再嫁。盛長は頼朝の側近として活躍しました。
次女・河越尼：武蔵国の有力豪族・河越重頼に嫁ぎました。
三女：伊豆国の有力豪族・伊東祐清に嫁いだ後、源氏の門葉である平賀義信の室となりました。

比企尼は比企郡から頼朝へ米を送り続け、娘婿たちに頼朝への奉仕を命じていたと伝えられています。また、長女と次女の娘はそれぞれ頼朝の異母弟である源範頼、源義経に嫁いでおり、源氏一門との繋がりを深めています。

男子に恵まれなかった比企尼は、甥の比企能員を猶子として比企氏の家督を継がせました。能員は後に頼朝の嫡男・頼家の乳母父となり、幕府内で大きな権力を持つようになります。この背景には、比企尼の存在があったことは言うまでもありません。また、比企尼の次女と三女も頼家の乳母を務めています。

夫の掃部允は、頼朝が挙兵する前に亡くなっています。

文治2年（1186年）と文治3年（1187年）には、頼朝と北条政子の夫妻が比企尼の屋敷を訪れ、宴会を催しています。比企尼は頼朝にとって、単なる乳母以上の存在であったことが伺えます。その後の動向や死没年は不明ですが、『吉見系図』には、孫娘の婿である源範頼が謀反の罪で誅殺された際、比企尼が頼朝に曾孫の助命嘆願を行い、範頼の息子たちが出家することで連座を逃れたという記述が残されています。

比企尼は、源頼朝を支え、比企氏の勢力拡大に大きく貢献した女性でした。

関連作品

テレビドラマ
新・平家物語（1972年、NHK大河ドラマ） - 演：柳川慶子
義経（2005年、NHK大河ドラマ） - 演：二木てるみ
鎌倉殿の13人（2022年、NHK大河ドラマ） - 演：草笛光子

関連項目

比企氏

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