主任無線従事者

主任無線従事者とは

主任無線従事者とは、無線局の無線設備の操作を監督する者のことです。電波法第39条第1項において、「無線局（アマチュア無線局を除く。）の無線設備の操作の監督を行う者」と明確に定義されています。

概要

1990年の電波法改正により、アマチュア無線局や特定の通信を除き、無線従事者資格を持たない者でも無線設備の操作が可能となりました。しかし、その無資格者による操作を監督するために設けられたのが主任無線従事者制度です。

主任無線従事者となるためには、原則として総務省令で定められた主任無線従事者講習の受講が義務付けられています。また、無線局の免許人や登録人は、主任無線従事者を選任・解任した際には、その旨を総務大臣に届け出る必要があります。

主任無線従事者の非適格事由

電波法施行規則第34条の3により、以下のいずれかに該当する者は、主任無線従事者となることができません。

1. 電波法に違反し、罰金以上の刑に処せられ、その執行を終えてから2年を経過していない者。
2. 電波法違反等により無線通信業務の従事を停止され、その期間満了から3ヶ月を経過していない者。
3. 主任無線従事者として選任される日以前5年間において、無線局での無線設備の操作または監督業務の従事期間が3ヶ月に満たない者（アマチュア局を除く）。

主任無線従事者の職務

電波法施行規則第34条の5に基づき、主任無線従事者は以下の職務を遂行します。

1. 無線設備の操作を行う者への訓練計画の策定と実施（実習を含む）。
2. 無線設備の点検、保守、またはその監督。
3. 無線業務日誌等の書類作成、またはその監督（記載事項に関する必要な措置を含む）。
4. 主任無線従事者の職務遂行に必要な事項に関して、免許人や登録人以外の使用者への意見表明。
5. その他、無線局の無線設備の操作監督に関する必要な事項。

主任無線従事者講習が不要な無線局

以下の無線局では、主任無線従事者講習の受講は必須ではありません（電波法施行規則第34条の6）。

1. 特定船舶局
2. 簡易無線局
3. 告示で定められた無線局
国際航海に従事しない船舶の無線航行移動局で、レーダーの型式検定に合格した機器を使用するもの
同一の主任無線従事者が複数の無線局に選任されている場合、空中線電力が最大の無線局以外

講習の受講期間

主任無線従事者は、以下のいずれかの期間内に講習を受講する必要があります（電波法施行規則第34条の7）。

1. 選任された日から6ヶ月以内。
2. 前回の講習から5年以内。
3. 船舶や航空機の航行中に期間が満了した場合、航行終了から3ヶ月以内。
4. 解任された日から1ヶ月以内（船舶局は6ヶ月以内）に別の無線局に選任された場合、直近の講習から3年以内。
5. 6ヶ月以内に無線局の主任無線従事者として選任予定の場合、あらかじめ受講可能。

無線設備の操作監督における三要素

主任無線従事者による無線設備の操作監督には、以下の三要素が不可欠です。

1. 臨場性：無資格者の操作状況を適切に把握できる状態。
2. 指示可能性：無資格者に対し、適時適切な指示ができる状態。
3. 継続性：主任無線従事者と監督を受ける無資格者が、継続的に業務に従事し、教育・訓練の機会が確保されている状態。

講習内容と区分

主任無線従事者講習は、電波法第39条の2第1項では「講習」と規定されていますが、無線従事者規則第70条では「主任講習」と明記されています。これは、認定講習課程による「認定講習」との混同を避けるためです。

講習は以下の3つの区分に分かれています。

海上主任講習：船舶の航行安全に関わる無線局の主任無線従事者対象
航空主任講習：航空機の航行安全に関わる無線局の主任無線従事者対象
陸上主任講習：上記以外の無線局の主任無線従事者対象

講習実施者

電波法第39条の2第5項第1号により、総務大臣の指定を受けた一般社団法人または一般財団法人でなければ、講習を実施することができません。

日本では、日本無線協会が年数回、各支部で講習を実施しており、eラーニングでの受講も可能です。

講習時間と修了証

講習時間は無線従事者規則第71条第1項に基づく別表第24号に定められています。修了者には、主任無線従事者講習修了証が交付されます。

講習手数料

2020年4月1日以降、講習手数料は21,500円です。

制度の沿革

1990年：制度化。講習間隔は3年以内でした。
2013年：講習間隔が5年以内に延長。eラーニングが導入されました。

関連情報

無線従事者: 無線設備の操作を行うための資格
外部リンク
主任無線従事者 電波利用に関する制度（総務省電波利用ホームページ）
よくある質問3 主任無線従事者講習についてのQ&A（日本無線協会）
新しい無線従事者制度について 郵政省電気通信局電波部計画課検定室 『テレビジョン学会誌』 1992年 46巻 5号 p.594-599, doi:10.3169/itej1978.46.594

もう一度検索