無線設備

無線設備とは

無線設備とは、電波法において「無線電信、無線電話その他電波を送り、または受けるための電気的設備」と定義されるものです。具体的には、送信機、受信機、トランシーバーといった無線機本体、電波を送受信するためのアンテナ、そしてこれらを接続する給電線などが含まれます。これらの設備は、電波法や無線設備規則によって技術基準が定められており、無線通信を行う上で重要な役割を果たしています。

無線設備の定義

- 電気的設備: 送信機、受信機、アンテナ、給電線など、電波の送受信に関わる機器全般を指します。
- 送信設備: 電波を送信するための設備で、送信装置（高周波エネルギーを生成する装置）と送信空中線系（電波を空間に放射する装置）から構成されます。送信機やトランシーバーの送信部、アンテナ、給電線などが該当します。
- 受信設備: 電波を受信するための電気的設備で、電波を発射するものではありませんが、受信性能や副次的に発する電波による妨害を防ぐため、電波法や無線設備規則で一般的な条件が定められています。

無線設備の種類

- 無人方式の無線設備: 自動的に動作し、通常は技術操作を必要としない無線設備です。24時間運用される無人局などで使用されます。
- 指定受信設備: 電波天文業務や宇宙無線通信の受信に用いられる設備で、微弱な電波を扱うため、他の電波による干渉から保護される必要があります。
- 船上通信設備: 船舶内や港湾内での通信に使用される無線設備で、船舶の運航に必要な作業通信、救助通信などに用いられます。デジタル化が進められています。
- 特定無線設備: 小規模な無線局に使用される無線設備で、技術基準適合証明や工事設計認証を受ける必要があります。コードレス電話、携帯電話端末、無線LAN機器などが該当します。
- 特別特定無線設備: 特定無線設備の中でも、他の無線局への妨害が少ないと認められるもので、製造業者や輸入業者が技術基準への適合を自己確認できます。コードレス電話、携帯電話端末、PHS 端末などが含まれます。
- 適合表示無線設備: 技術基準適合証明や工事設計認証を受けた無線設備で、技適マークが表示されています。ただし、技術基準に適合しない場合は、その旨が公示され、技適マークが無効になることがあります。
- 特定周波数無線設備: 不法無線局が多い周波数帯で使用される無線設備です。
- 指定無線設備: 特定周波数無線設備のうち、総務大臣が指定したもので、販売時には免許が必要である旨を告知する必要があります。
- 基準不適合設備: 技術基準に適合しない無線設備で、他の無線局に妨害を与える可能性があり、製造業者や販売業者は行政指導の対象となることがあります。

無線設備の歴史

無線設備の定義は、電波法の制定とともに始まり、時代に合わせてその範囲や技術基準が変更されてきました。以下に主な沿革を示します。

- 1950年: 無線設備と送信設備が定義。
- 1958年: 無人方式の無線設備が定義。
- 1965年: 指定受信設備に関する規定。
- 1975年: 船上通信設備が定義。
- 1981年: 特定無線設備が規定。
- 1987年: 基準不適合設備が規定。
- 1994年: 特定周波数無線設備と指定無線設備が規定。
- 2004年: 適合表示無線設備と特別特定無線設備が規定。
- 2015年: 登録修理業者制度が制定。
- 2018年: 船上通信設備のデジタル化開始。
- 2023年: 不法パーソナル無線機が指定無線設備から除外。

高周波利用設備

無線設備とは別に、「高周波利用設備」というものも存在します。これは電波を直接利用するものではなく、高周波エネルギーを発生させて利用するもので、電力線搬送通信設備、医療用設備、工業用加熱設備などが該当します。これらの設備は無線設備ではないため、無線従事者の資格は必要ありません。

無線電信法

電波法の前身である無線電信法では、「無線設備」という言葉は使われておらず、「無線電信」や「無線電話」が設備を指していました。現在の電波法における無線設備の定義は、この無線電信法の表現を踏襲したものです。