久保田権四郎

久保田権四郎：近代日本の産業を支えた不屈の pioneer

久保田権四郎（くぼた ごんしろう）は、明治3年（1870年）に広島県尾道市で生まれ、昭和34年（1959年）に89歳で没した実業家であり、発明家です。株式会社クボタの創業者として、日本の産業発展に大きく貢献しました。

貧困からの出発と起業

備後国御調郡大浜村（現在の尾道市因島）の貧しい農家に末っ子として生まれた権四郎は、幼い頃から瀬戸内海を行き交う蒸気船に憧れ、「いつかはあんな大きな船を作る鍛冶屋になりたい」と夢見ていました。両親を楽にさせたいという思いから、15歳で大阪に出て鋳物屋に丁稚奉公に入ります。そこで才能を発揮し、誠実で器用、そして根気強い性格で頭角を現しました。節約して資金を貯め、1890年、19歳の若さで大阪市南区（現在の中央区）に「大出鋳物」を創業し、秤の分銅などを製造しました。

国産初の鋳鉄管製造への挑戦

明治時代、日本は文明開化の波に乗り、海外からの伝染病の侵入を防ぐために近代水道事業が急がれていました。水道管に使用する鋳鉄管の国産化が決定されたものの、高い水圧に耐えられる品質のものを製造する技術がなく、不良品が続出。多額の費用をかけて海外から輸入せざるを得ない状況でした。1893年、権四郎は独力で鋳鉄管の研究・製造に着手します。多くの事業者が試みるも失敗する中、権四郎は不撓不屈の精神で研究を続け、回転式丸堅込鋳造法などの発明によって、1897年に国産初の直管式鋳鉄管の製造に成功。1900年には実用化にこぎつけ、日本の水道インフラの発展に大きく貢献しました。彼の製造した鋳鉄管は、大阪府や東京都の水道管・ガス管に大量に使用され、会社発展の礎となりました。「日本の水道管の歴史はクボタの歴史」と言われるほどです。

久保田鉄工所の設立と事業の多角化

1900年、権四郎は久保田家の養子となり、社名を「久保田鉄工所」と改名。その後、紡績機械、工作機械、農作機械、発動機など、様々な分野に進出し、事業を拡大しました。満州久保田鋳鉄管、尼崎製鉄などの設立を通じて、事業の多角化を推進。また、草創期の自動車製造にも乗り出し、1919年に「実用自動車製造株式会社」を設立しましたが、成果を得られず、1926年に国産工業（現在の日立金属）の子会社である「合資会社ダット自動車商会」と合併し、「ダット自動車製造株式会社」となりました。この会社は、後に日産自動車の母体となります。

社会貢献と晩年

戦後、会社再建の途中に高齢のため、1949年に社長を退き相談役となりました。1959年、89歳で生涯を閉じましたが、その生涯で取得した特許は70件、実用新案は150件を超える発明家でもありました。また、社会公共事業にも尽力し、1911年には貧しい子供たちのために開かれた「私立徳風尋常小学校」を支援。私財を投じて郷里・因島の道路建設も行いました。大阪市の高級住宅地・帝塚山に構えた大邸宅の跡地は、現在大阪市立晴明丘南小学校となっています。

叙勲

1923年紺綬褒章、1928年緑綬褒章、1953年藍綬褒章を受章。1943年勲五等瑞宝章、1959年正五位勲三等旭日中綬章を受章。

久保田権四郎は、日本の近代化を支えた偉大な pioneerとして、その名と功績は永く語り継がれるでしょう。

もう一度検索