久保田正文 (文芸評論家)

久保田 正文 (くぼた まさふみ)

久保田正文は、1912年9月28日に長野県下伊那郡山本村（現在の飯田市）に生まれた、日本の文芸評論家、作家、そして文学博士です。彼の生涯にわたる文学活動は、戦前から戦後にかけて多くの作品と評論を残し、日本の近代文学の発展に寄与しました。

経歴

長野県に生まれた久保田は、旧制飯田中学（現長野県飯田高等学校）を卒業後、松本高等学校文科甲類を経て、東京帝国大学文学部美学科を卒業しました。卒業後は、福井県の旧制北陸中学（現在の北陸中学校・高等学校）に教員として勤務しましたが、彼の小説『残夢』が治安維持法違反として問題視されました。

その後、彼は日本大学藝術学部教授を経て、大正大学文学部教授に就任しました。彼は1940年代から本格的に文学活動を始め、1946年には東京に上京しました。翌年には短歌雑誌『八雲』の編集を手がけ、1947年には新日本文学会に入会し、同年に発表した作品『しづかな甍』で文学デビューを果たしました。その後、彼は民主主義文学者として多くの小説や評論を発表し、石川啄木、芥川龍之介、石川達三に関する研究や正岡子規の評伝、短歌論などを執筆しました。また、数多くの文庫本の解説も手がけました。

久保田は、『毎日新聞』で長年にわたり同人雑誌の評価を行い、その後も1957年からは『文學界』で同人誌評を担当しました。その取り組みや貢献が評価され、1979年には林富士馬、駒田信二、小松伸六と共に第27回菊池寛賞を受賞しました。

著書

彼の著作は多岐にわたりますが、以下にいくつかの主要な著書を挙げます。

• - 『花火』北辰堂, 1956
• - 『評伝石川啄木』実業之日本社, 1959
• - 『百人一首の世界』文藝春秋新社, 1965 （その後文庫化）
• - 『労働者文学の条件』現代書房, 1965
• - 『正岡子規』吉川弘文館 (人物叢書), 1967
• - 『芥川龍之介 その前後』現文社, 1967
• - 『近代短歌の構造』永田書房, 1970
• - 『冬のランプ』冬至書房, 1972
• - 『現代短歌の世界』新潮選書, 1972
• - 『石川達三論』永田書房, 1972
• - 『芥川龍之介 その二律背反』いれぶん出版, 1976
• - 『作家論』永田書房, 1977
• - 『正岡子規・その文学』講談社, 1979
• - 『新・石川達三論』永田書房, 1979
• - 『近代短歌の条件』教育出版センター, 1980
• - 『昭和文学史論』講談社, 1985
• - 『正岡子規と藤野古白』永田書房, 1986
• - 『現代短歌往来』筑摩書房, 1988
• - 『燕雀雑稿』永田書房, 1991
• - 『芥川龍之介 影の無い肖像』木精書房, 1997
• - 『久保田正文著作選』小嶋知善編 大正大学出版会, 2009

彼の編著にも注目すべき作品が多く、例えば『インテリは生きてゐられない』（1952）、『芥川龍之介読本』（1955）、『日本現代詩辞典』（1955）など、多くの文学資料を編集しました。

影響と評価

久保田の文学への貢献は非常に大きく、彼の考察や批評は現在も多くの文芸研究者や愛好者にとって重要な参考資料となっています。彼の業績と考え方は日本文学界において長く影響を与え続けています。2001年6月6日に彼は89歳で亡くなりましたが、その足跡は今なお多くの人々に記憶されています。

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