久保筑水

久保筑水（くぼ ちくすい）は、宝暦9年（1759年）に生まれ、天保6年7月13日（1835年8月7日）に没した江戸時代後期の儒学者です。筑水は号であり、名は愛（あい、久保愛）、字は君節、通称は荘左衛門でした。彼は折衷学派に属し、その学問的業績は高く評価されています。

筑水の出身地については、信濃国（現在の長野県）とする説と、安芸国（現在の広島県）とする説があります。彼は一橋徳川家に儒官として仕え、その学識をもって藩政に貢献しました。また、久喜郷（現在の埼玉県久喜市）にあった郷学「遷善館」においては、身分に関わらず庶民に対して講義を行い、教育の普及に尽力しました。

筑水は、折衷学派の儒学者である片山兼山に師事し、その教えを受けました。兼山から受け継いだ学問的遺産を фундамент とし、独自の学問体系を構築しました。彼の門下からは、河尻春之などの優れた人材が輩出されています。

筑水の主な著書としては、以下が挙げられます。

『荀子増注』: 『荀子』の注釈書であり、師である片山兼山の成果を継承し、発展させたものです。江戸時代の『荀子』研究の集大成とも言われ、詳細かつ精緻な注釈は、後世の研究者にも大きな影響を与えました。本書は、冨山房の「漢文大系」にも収録されています。
『論語集義』: 孔子の言行をまとめた『論語』の解釈書です。
『学庸精義』: 『大学』と『中庸』の解釈書です。
『淮南子注考』: 『淮南子』の注釈書であり、こちらも冨山房「漢文大系」に収録されています。

久保筑水の学問的業績は、単なる古典の解釈に留まらず、社会のあり方や人としての生き方についても深く考察した点にあります。彼の思想は、門弟たちを通じて広く社会に浸透し、江戸時代後期の思想界に大きな影響を与えました。

関連文献として、藤川正数氏による『荀子注釋史上における邦儒の活動 正篇』（風間書房、1980年）があります。この書籍では、久保筑水の『荀子増注』が、日本の儒学史においてどのように位置づけられるのかが詳細に分析されています。

久保筑水は、江戸時代後期の儒学界において、重要な役割を果たした人物として、今後も研究が進められていくことが期待されます。

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