河尻春之

河尻春之

河尻春之（かわじり はるゆき）は、宝暦6年（1756年）に生まれ、文化12年12月22日（1816年1月20日）に没した江戸時代後期の旗本です。初名は育（やしなう）といい、後に春、あるいは春之と改めました。通称は甚五郎で、妻は石川公鬯の娘です。官途は肥後守、のちに式部少輔を務めました。

生涯

河尻家の遠祖は、織田信長の家臣であった河尻秀隆で、旗本河尻家はその次男である鎮行が江戸幕府に仕えたことに始まります。

安永元年（1772年）に、父である河尻鎮恒の跡を継ぎました。学問を好み、久保筑水に師事し、筑水の『學庸精義』に補注を加えています。この補注を加えたものは「刪補河尻育」と記されています。また、林家の家塾でも学んでいます。

天明2年（1782年）には江戸城西丸納戸番となり、天明6年（1786年）には本丸納戸番に異動しました。寛政4年（1792年）には信州中野代官（現在の長野県中野市）に任命され、寛政7年（1795年）には初代大和五條代官（現在の奈良県五條市）となりました。

文化4年（1807年）10月24日には、本丸納戸頭兼勘定吟味役から村垣定行とともに松前奉行に任命されました。この時、箱館から福山へ奉行所が移転しています。廃止となった箱館奉行時代の戸川安論、羽太正養も引き続き奉行となり、4名体制で松前奉行が発足しました。対露政策においては、大胆な施策を献言するなど、その手腕を発揮しました。

文化6年（1809年）7月には西丸持弓頭に転任しました。文化12年（1815年）12月22日に役所にて61歳で亡くなりました。河尻春之が林家塾へ入門する際、紹介者となり、松前奉行時代には屯田で協力を仰いだ八王子千人同心組頭の塩野適斎が、遺族からの依頼で彼の遺文を集成し、『製阪肥後公遺稿』として編纂されました。葬地は菩提寺である久成寺で、墓所は現在も残っています。

参考文献

『寛政重修諸家譜』
『新撰北海道史』（北海道庁、1937年）
『幕府の地域支配と代官』（同成社、2001年）
『製阪肥後公遺稿』河尻春之、塩野適斎編
『黒船前夜:ロシア・アイヌ・日本の三国志』渡辺京二（洋泉社、2010年）
『蝦夷地取計之上申書』河尻春之・荒尾成章
* 『休明光記』羽太正養

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