久米仙人

久米仙人についての詳説

久米仙人（くめのせんにん）は、奈良県橿原市にある久米寺を創設したとされる伝説の人物です。彼の存在は多くの仏教関連文献や説話に記され、特に『和州久米寺流記』や『本朝神仙伝』などに登場します。文献によっては「毛堅仙」や「毛堅仙人」とも呼ばれ、彼の名は広く知られています。

生い立ちと修行

久米仙人は、欽明天皇の時代（539年頃〜571年頃）に葛城の里で生まれたと言われています。彼は、竜門岳で修行を行い、そこで神通飛行術を習得しました。これは、空を飛ぶ力を意味し、久米仙人はこの技術を使って竜門岳から葛城山へと飛ぶことが日常的であったと伝えられています。

天平年間（729年〜749年）には、龍門寺の堀に住みながら、空中を飛び交う日々を送っていました。しかし、ある日、久米川の近くで若い女性が洗濯をしているのを見かけ、その女性に心惹かれたために神通力を失ってしまいます。この出来事をきっかけに彼は地上に墜落し、女性と結婚し平凡な生活を送ることになります。

大仏殿の建立と功績

その後、聖武天皇が東大寺に大仏殿を建造することを命じた際、久米仙人は一般人として夫役を務め、材木の運搬に従事しました。周囲の人々が彼を仙人と呼ぶことに影響を受けた役人から、「仙人であれば、神通力で材木を運べないか」と提案されます。彼は七日七夜の修行を経て神通力を取り戻し、8日目には吉野山から切り出した材木を空中に浮かせて運ぶ姿が目撃されました。この巧妙な自体により、大仏殿は迅速に完成し、聖武天皇は彼に免田を授け、久米仙人はその土地に久米寺を設立しました。このことが久米寺の由来とされています。

弘法大師との関わり

後に弘法大師が久米寺を訪れ、『大日経』を感得したことが、大師が唐に渡り真言を学ぶ契機となりました。この逸話は久米仙人の影響力を示すものであり、彼の存在が後世にわたる重要な伝承へと繋がります。資料によっては藤原京や平城京の造営時にも彼の名前が挙がっており、彼がこの土地に与えた影響は広範囲にわたります。

その他の伝説

久米仙人や彼の妻がどこかに飛び去ったとの後日談もあり、彼は十一面観音、彼の妻は大勢至菩薩として神格化されています。彼に関する記録は、古典文学の中にも見られ、例えば『徒然草』では彼の美しさを称賛する表現がなされています。久米仙人の修行の様子は龍門寺の扉にも描かれており、この伝説の重要性を物語っています。

久米寺の背景

久米寺は、久米仙人に関連する寺院として知られていますが、実はその起源はもっと古く、推古天皇の時代に遡ります。聖徳太子の弟、来目皇子が創設したとされ、彼自身が幼少期に眼病に苦しんだ結果、薬師如来に祈願したことで癒された話が、この寺の成立につながっています。このように久米寺は、久米仙人だけでなく、多くの歴史的、宗教的な背景を持つ重要な場所であることがわかります。

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