久米成夫

久米成夫は、1882年（明治15年）12月1日に鹿児島県薩摩郡山崎村（現在のさつま町）で生まれました。父は山崎村長を務めた久米岳です。彼は、鹿児島県立川内中学校、第七高等学校造士館を首席で卒業後、1910年7月に東京帝国大学法科大学を卒業しました。同年11月には文官高等試験行政科試験に合格し、内務省に入省して千葉県属に任官しました。

その後、久米は地方行政官としてのキャリアを積み重ね、千葉県試補、神奈川県愛甲郡長、同県理事官・知事官房主事、同県商工課長、秋田県理事官・教育兵事課長、岩手県警察部長、神奈川県警察部長、山形県内務部長、岩手県書記官・内務部長、広島県書記官・内務部長などを歴任しました。これらの役職を通じて、彼は地方行政の実務経験を豊富に蓄積しました。

1928年6月には大分県知事に就任しましたが、1929年7月に濱口内閣が成立したことで知事を休職しました。1931年12月には愛媛県知事に就任し、その後1932年6月には奈良県知事に転任しました。奈良県知事時代には、不況対策に尽力しましたが、1934年2月1日に依願免本官となり、知事を辞職し退官しました。

退官後、久米は満洲国に転じ、奉天省総務庁長や満洲国国務院総理・鄭孝胥のもとで文教部総務司長などの要職を歴任しました。その後、1940年7月から1944年7月まで鹿児島市長を務めました。しかし、第二次世界大戦終結後、久米は公職追放の対象となり、晩年は故郷の生家で静かに暮らしました。

1954年9月29日の早朝、自宅を出たまま行方不明となり、夜になって自宅近くの海岸で水死体で発見されました。彼の突然の死は、多くの人に衝撃を与えました。

久米成夫は、明治から昭和にかけて激動の時代を生きた官僚であり、地方行政に深く関わりました。彼の足跡は、日本の近代史における地方行政の変遷を語る上で重要な一例と言えるでしょう。

参考文献:
歴代知事編纂会編『新編日本の歴代知事』歴代知事編纂会、1991年。
秦郁彦編『日本官僚制総合事典：1868 - 2000』東京大学出版会、2001年。
* 宮之城町史談会編さん委員会編『宮之城人物伝 第1集』宮之城町史談会、1983年。

もう一度検索