久米譲

久米譲：日本のサイレント映画を彩った名優

久米譲（くめ ゆずる、1899年11月29日 - 1945年）は、日本の俳優です。本名は西條虎治（さいじょう とらじ）。明治から昭和にかけて、数々の映画作品に出演し、日本のサイレント映画黄金期を支えた重要な人物の一人でした。

華麗なるキャリアの始まり

1899年、東京府東京市浅草区に生まれた久米は、1908年、新派の俳優柴田善太郎に入門。子役としてキャリアをスタートさせます。その後、歌舞伎俳優浅尾工左衛門の門下に入り、「浅尾工女次郎」として女形を演じるなど、幅広い演技力を磨きました。1920年には国際活映（国活）に入社し、映画界本格的に進出します。初期の出演作については記録が残っていませんが、監督吉野二郎に見出されたとされています。

松竹、日活、そして新興キネマへ

1922年、吉野二郎監督が国活から松竹蒲田撮影所に移籍すると、久米も同行。澤村四郎五郎主演の『実録忠臣蔵』に出演し、注目を集めます。関東大震災による撮影所の被害を受け、京都の松竹下加茂撮影所に移り、その後、芸名を「粂西譲」、「久米譲」と変えながら、松竹で活躍を続けます。1926年には松竹キネマを退社し、実演の巡業を経て、日活大将軍撮影所に入社。伊藤大輔監督作品などに出演し、確かな演技力で存在感を示しました。その後、新興キネマに移籍し、『羅生門』、『大村益次郎』などに出演、時代劇から現代劇まで幅広い役柄を演じきりました。1942年、大映設立に伴い同社へ入社し、1942年公開の『富士に立つ影』が遺作となりました。

カツラの革命

久米は、カツラに関する革新的な工夫でも知られています。サイレント映画時代、女形が女性の役を演じていた時代から女優が台頭すると、男性俳優のかつらの不自然さが目立つようになりました。そこで久米は、他のスター俳優たちと共に、頭を剃ってカツラをかぶるという画期的な試みを行いました。しかし、これは広まらず、久米自身だけがこのスタイルを続けました。日活に移籍後も、久米は独自のカツラを研究。亀甲紗に毛を植えることで、より自然な生え際を演出することに成功しました。しかし、監督からは「他と釣り合わない」と却下され、理解されないまま終わりました。

しかし、稲垣浩監督が千恵プロでこの久米の技術を試したところ、成功。以来、千恵プロでは主要人物に亀甲紗のカツラを使うようになり、他の映画会社にも広まりました。この久米の工夫は、映画界から舞台へと逆輸入され、現代のカツラ技術の礎を築いたのです。

晩年とフィルモグラフィー

1945年、久米は45歳で亡くなりました。正確な死因は不明ですが、肺病を患っていたとされています。

久米譲は、数多くの映画に出演し、日本の映画史に貢献しました。彼のフィルモグラフィーは非常に長く、その演技力は高く評価されています。彼の革新的なカツラ技術は、現代の映画製作にも影響を与えています。彼の功績は、日本の映画史において重要な位置を占めています。彼の名は、これからも日本の映画界に語り継がれていくでしょう。

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