乙女騎士♥いますぐ私を抱きしめて

『乙女騎士♥いますぐ私を抱きしめて』は、アダルトゲームブランドであるensembleの姉妹ブランド、ensemble SWEETから2019年 4月26日にリリースされた18禁恋愛アドベンチャーゲームです。ensemble SWEETとして初めて女装の主人公を採用した作品であり、姉妹ブランドensembleが展開する「乙女シリーズ」各作品と世界観を共有しています。シリーズのテイストを踏襲しつつ、コメディ要素とエッチな要素がより強調された内容となっています。

システム

本作のシステムは、一般的な恋愛アドベンチャーゲームに準じています。マウスクリックなどの操作でテキストを読み進め、物語が展開していきます。物語の選択肢によってその後の展開が変化する形式であり、攻略対象となるヒロインは3人用意されています。

あらすじ

ドイツのインターナショナル・スクールに通う桐谷沙綾は、かねてよりの希望であった日本の姉妹校への留学許可を得ます。しかし、生来の病弱が原因で倒れてしまい、長期入院となってしまいます。このままでは留学の機会を失うかもしれないと案じた双子の弟、綾斗は、重大な決意を胸に日本へと渡航します。そして、姉が着るはずだった、お嬢様が集う名門「リナリア女学院」の制服に身を包むのでした。

姉の代理として、性別を偽って女学院での生活を始めた綾斗は、同級生の雪代ちとせ、上級生の暁天音、下級生の黒峰水純といった生徒たちと親しくなっていきます。学園では、伝統的な大イベントである「ディアナ祭」が間近に迫っており、ちとせたちは祭りの主要な役割である「ハンター」に選ばれていました。そんな折、綾斗（沙綾として振る舞う）も、あるきっかけから「ラビット」役に指名されてしまいます。祭りの詳細を知った綾斗は驚きを隠せません。ディアナ祭では、ハンターたちが剣で戦い、ラビットを奪い合い、最終的な勝者となったハンターとラビットは一夜を共にすることになっている、というのです。

舞台

本作の主な舞台は、ドイツの宣教師によって設立されたという歴史を持つリナリア女学院です。この学園では、豊穣や豊作を願うヨーロッパの儀式に由来する伝統行事「ディアナ祭」が毎年秋に催されます。学園の隣接する森で行われる祭りの中心イベントは「競技大会」と呼ばれています。元々は麦穂の精霊を刈り取る農民の祭りが起源とされていますが、長い年月を経てその形は変化し、農民は狩人（ハンター）へ、精霊は兎（ラビット）へと役割を変えました。しかし、開会式でのラビット役生徒による宣誓には、古い祭りの名残が色濃く残されています。

宣誓文はまた、現代において変容した祭りの形式を端的に示しています。すなわち、競技大会とは、森の中を逃げるラビット役の生徒を、ハンター役の生徒たちが追いかけて捕まえるという追跡競技なのです。

ハンターは大会のために特別に用意された模造刀と、特殊強化プラスチック製の鎧を身につけます。森の中でハンター同士が遭遇した場合には、決闘が行われます。この決闘のルールはフェンシングに源流を持ちますが、剣以外の攻撃も認められるなど、リナリア女学院独自の規則に則っています。相手の鎧に有効な一撃を入れるか、相手の反則行為によって勝敗が決します。

一方、ラビット役の生徒は、普段の制服の上にベールを纏います。競技大会では、ハンターが最後の一人になるまで逃げ続けるという暗黙の了解が存在します。

ハンター役は、毎年、運動能力や格闘センスに特に秀でた複数の生徒の中から選ばれます。その際、特に優れた者には栄誉ある「ふたつ名」が与えられることもあります。

ラビット役は、前年のラビットによって指名される形で代々引き継がれる、ディアナ祭における最も重要な役割です。ディアナ祭が終わった後も学園の代表としての任を務めることから、全校生徒にとって憧れの存在となっています。また、競技大会で優勝したハンターとラビットは、その夜を森の中にあるロッジで共に過ごすという特別な習わしがあります。

登場人物

本作を彩る主な登場人物たちです。

ラビット（主人公）
桐谷沙綾（きりたにさあや）／本名：桐谷綾斗（きりたにあやと）：双子の姉の身代わりに、女性としてリナリア女学院に編入した少年。2年生で、学園の寮生活を送ります。日本生まれですが、幼少期からドイツで育ったためバイリンガル。右利きで大の甘党、スイーツ作りが趣味。日本の文化に強い憧れを抱いています。善意や熱意から周囲が見えなくなることも。偶然拾った白バラのペンダントがラビットの証であると知らず受け取ります。姉から贈られた機械式腕時計を大切にしています。

ハンター（ヒロイン）
雪代ちとせ（ゆきしろ－）：リナリア女学院2年生。沙綾とは同じクラスで寮も一緒。「無敗の白」のふたつ名を持つ実力者。学園に馴染めていない沙綾に親切に接します。沙綾の秘密を知ると協力を申し出る面倒見の良い一面も。一度落ち込むと立ち直りに時間がかかる性格です。幼い頃に観戦した競技大会のハンターに憧れてこの道へ。堅実な戦い方で、綿密なシミュレーションで相手の動きを読み、不利な状況でも引き分けに持ち込むことを信条としています。実家は電化製品工場を経営しており、自身も機械いじりが得意。沙綾の壊れた腕時計を修理したり、二足歩行ロボットやアダルトグッズまで自作する腕前。
暁天音（あかつきあまね）：リナリア女学院3年生。「最強の緋」の異名を持つ、名実ともに最強のハンター。世界的に事業を展開する暁グループの令嬢。幼少期から様々な格闘技を習得しており、1年次から3年連続でハンターに選出されています。決闘時には独特の言い回しを多用します。令嬢というイメージに反して、懐中電灯コレクションなど子供っぽい趣味も。沙綾の男性器を見てトランスジェンダーと誤解し、女同士と勘違いして関係を持ってしまいます。
黒峰水純（くろみねみすみ）：リナリア女学院1年生。「無敵の黒」のふたつ名を持つ唯一の1年生ハンター。道場を営む家系に生まれ、神速の抜刀術を極めています。その実力は「暁天音の再来」と評されるほど。普段は胸にサラシを巻いています。男性のように育てられた影響か、料理は大雑把で丼物しか作れず、私服のセンスも壊滅的。悪友の漫画から歪んだ性知識を得ており、沙綾の男性器を見てから、競技大会で一夜を共にするまで沙綾を両性具有の女性だと誤解したままです。

サブキャラクター
桐谷沙綾（きりたにさあや）※本人：綾斗の双子の姉。病弱で肺炎を患い、ドイツの病院に入院中です。弟とは対照的に左利きの辛党。貧乳を気にしていますが、学校では男子から人気があるようです。重度のブラコン。
金子緒美（かねこおみ）：リナリア女学院2年生。放送部に所属し、競技大会の実況を担当します。沙綾とちとせのクラスメイトで、ちとせとは入学以来の親友。「学園の噂通」と呼ばれ、時折語尾が「にゃー」になる「ねこおみ」モードで取材活動を始めます。
山吹杏樹（やまぶきあんじゅ）：リナリア女学院3年生。2年連続でラビットを務め、学園内で絶大なカリスマ性を持ちます。天音とは幼馴染。後任ラビット選びに難航していたところへ沙綾が留学。ラビットの座を沙綾に譲った後はサポート役を務めます。ちとせルートでは競技大会中継の解説も担当。普段はぼんやりしているようですが、鋭い一面があり、沙綾の女装にも気付いていたような描写があります。
丸山かんな（まるやま－）：リナリア女学院1年生。水純の悪友。マイペースなオタクで、お嬢様学園には珍しいタイプ。携帯ゲーム機を持ち込んでは水純に没収されています。没収されたアダルト漫画をきっかけに水純を変態の道に引き込んだ張本人。水純ルートでは次年度のラビットを目指すと発言。
乙女シリーズからの客演：『花と乙女に祝福を』から、主人公の従兄妹として月丘彰と月丘晶子が登場します。

スタッフ・主題歌

本作の原画は、るちえ氏（沙綾、ちとせ）、はるるゆこ氏（天音）、八島タカヒロ氏（水純）が担当しています。シナリオは犬狂い氏、服飾デザインはきみづか葵氏、音楽はミリオンバンブー、ムービー制作は神月社氏と癸乙夜氏（Mju:z）、ディレクションは夏月氏が手掛けました。

主題歌は、オープニングテーマ「Blooming Knight」とエンディングテーマ「U AND I Love Chase」の2曲があり、作詞と歌唱は灰墨イノリ氏、作曲・編曲は鳴呼憂氏が担当しています。

反響

発売後の反響についてです。

売上：発売月である2019年4月の売上集計では、Getchu.comで15位、アダルトゲーム月刊誌『BugBug』で14位にランクインしました。しかし、年間を通した集計では、Getchu.com、BugBugともに上位圏外となりました。
人気投票：ユーザー人気投票においても、発売月、年間ともに主要なサイトや雑誌の集計で上位圏外という結果でした。
* 批評：『BugBug』2019年7月号に掲載されたレビューでは高く評価されています。レビュアーは、ヒロインたちがそれぞれ意外な側面を持っており、深く知るほど魅力を感じると指摘。特に、主人公の女装が明らかになった際のヒロインたちの三者三様の反応が面白かったと述べています。ヒロインの魅力を引き立てつつ、ディアナ祭という見どころも用意されており、「Hもバランス良く盛り込まれ、肩を張らずにプレイできる」「安心して楽しめる作品だった」と評されました。

収録メディア・参考文献

本作のサウンドトラックは、ウィルプラス公式通販特典「乙女騎士♥いますぐ私を抱きしめて SOUNDTRACK」に主題歌2曲のフルバージョンが収録。ソフマップ特典「OP&EDショートセット（MINI SOUND TRACK）」にはBGM5曲と主題歌2曲のショートバージョンが収録されています。

参考文献としては、『月刊メガストア』2019年5月号、『BugBug』2019年5月号、7月号、2020年4月号といった雑誌記事や、『花と乙女に祝福をビジュアルファンブック』（彩文館出版）が挙げられます。

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