乙渾

乙 渾の生涯と北魏における影響

乙 渾（おつ こん、生年不詳 - 466年）は、北魏時代の重要な権臣として知られています。彼の生い立ちや若い頃の経歴については詳細が伝わっていませんが、彼の活動時期には権力闘争が激化していました。

出自と初期の経歴

乙渾に関する資料は少なく、彼の出自と前半生の情報はほとんど存在しませんが、歴史家の姚薇元は彼が乙弗氏に属すると位置づけています。乙弗氏は、吐谷渾北部の支族で、青海湖付近に住んでいた民族であると考えられています。このような背景から、乙渾は北魏の権威を背負った一族の一員である可能性があります。

彼は文成帝の治世中に車騎大将軍の称号を受け、東郡公に封じられました。その後、462年（和平3年）1月には太原王に封じられ、さらなる出世を果たしました。乙渾は、後に車騎大将軍の地位を維持しつつ、侍中の称号も加えられました。

権力が集中する時代

465年（和平6年）5月、登場した献文帝が即位すると、乙渾はその力を一層強めます。彼は詔（令）を偽って、尚書の楊保年、平陽公の賈愛仁、南陽公の張天度を殺害しました。この時期、乙渾は権力を完全に掌握し、国事は大小を問わず彼の決裁に委ねられることになります。

更に、司徒の平原王陸麗が療養中から復帰すると、乙渾は彼も手にかけ、自らの権勢を誇示したのです。466年（天安元年）には、河間公拓跋斉の子、河間公拓跋陵を殺害するなど、その行動は冷酷でした。

反乱の密告と処刑

しかし、乙渾の権力拡大は長く続きませんでした。侍中の拓跋丕が、彼が反乱を計画しているとの密告を行いました。この報告を受けた献文帝は、まだ幼い12歳であり、実権を握る文明太后が乙渾排除に動きます。拓跋丕は献文帝の命を受け、拓跋賀と牛益得を伴って乙渾を捕らえました。

乙渾は反乱の企てによって466年に処刑され、その生涯を閉じました。彼の死は、北魏における権力闘争の複雑さを象徴する出来事でした。彼が持っていた権力は、一瞬の内に揺らぎ、結果的に反乱の密告によって彼の運命は絶たれたのです。

結論

乙渾の歴史は、北魏の動乱の象徴であり、彼の生涯からは権力の危うさや、その背後に潜む人間関係の複雑さを学ぶことができます。彼は自らの権力を拡大し続けたものの、周囲の策略によってその運命を大きく左右されることとなったのです。

もう一度検索