吐谷渾

吐谷渾（とよくこん）とは

吐谷渾は、3世紀から7世紀にかけて青海地方を支配した遊牧民族です。五胡十六国時代に、鮮卑慕容部から分かれて独立し、独自の文化を築きました。

歴史

建国

吐谷渾の始祖は、鮮卑慕容部の庶長子である慕容吐谷渾です。彼は、兄である慕容廆との不和から部族を離れ、西へ移動しました。その後、現在の青海地方に定住し、遊牧生活を始めました。彼の死後、子孫たちは彼の名を国名としました。

六朝との関係

吐谷渾は、南北朝時代の中国王朝と頻繁に交流し、朝貢を行いました。中国文化を積極的に取り入れ、436年には北魏から、438年には南朝宋から将軍の称号を授けられました。444年には、内部抗争により一時的に于闐国を占拠しましたが、後に故地に帰還し、南朝宋との関係を深めました。この頃、吐谷渾は西域南道諸国を支配し、シルクロードの交易を統制していました。

隋唐との関係

隋の時代には、シルクロードの交易路を確保するため、隋軍による攻撃を受け、一時的に傀儡政権が樹立されました。隋末の混乱期には、吐谷渾は勢力を回復しましたが、唐の時代になると、太宗による遠征を受け、東西に分裂しました。西部は吐蕃に降伏し、東部は唐の属国となりました。唐は、吐谷渾の王に公主を降嫁させるなど、懐柔政策を行い、友好的な関係を築きました。

滅亡

663年、吐谷渾は吐蕃の攻撃を受け、壊滅的な打撃を受けました。多くの人々は唐に逃れ、残った者は吐蕃の支配下に置かれました。唐は吐谷渾の復興を試みましたが、大非川の戦いで吐蕃軍に大敗し、青海地方はチベットの領域に組み込まれることになりました。一部の吐谷渾の人々は各地に逃れ、その勢力は衰退しました。吐谷渾の名は、遼の時代まで史料に見られますが、その後、漢民族に吸収されました。

社会経済

吐谷渾は遊牧を主な生活基盤とし、馬、ヤク、ラクダなどを飼育していました。特に、良馬は「青海駿」と呼ばれ、名馬として知られていました。青海地方は寒冷なため、農業はあまり発展しませんでしたが、銅や鉄を産出し、鉱山や冶金が発展しました。吐谷渾の領土は現在の新疆南部にまで及び、キャラバン隊はシルクロードを通って中央アジアやペルシャにまで進出し、その物産を長安にまで運びました。

文化

吐谷渾の宗教は、もともとシャーマニズムでしたが、後に仏教を信仰するようになりました。514年には、益州に九層の仏寺を寄進しました。文字を持たなかったため、上流階級は漢字を使用していました。吐谷渾の女性は、金の花で頭を飾り、特に王の妃は華やかな金の花冠をかぶっていました。これは、遼西の慕容部に共通する風俗です。

歴代君主

慕容吐谷渾（286年 - 317年）
吐延（317年 - 329年?）
葉延（329年? - 351年?）
辟奚（351年? - 375年?）
視連（375年？ - 390年?）
視羆（390年? - 400年?）
烏紇提（400年? - 407年?）
樹洛干（407年? - 417年?）
阿豺（417年? - 426年）
慕璝（426年 - 436年）
慕利延（436年 - 452年）
拾寅（452年 - 481年）
度易侯（481年 - 490年）
伏連籌（490年 - 529年）
仏輔（529年 - 534年）
可沓振（534年 - 540年）
夸呂（540年 - 591年）
世伏（591年 - 597年）
伏允（597年 - 635年）
趉胡呂烏甘豆可汗（慕容順）（635年 - 636年）
烏地野抜勤豆可汗（諾曷鉢）（636年 - 666年）
烏地野抜勤豆可汗（諾曷鉢）（666年 - 688年）※唐へ亡命
慕容忠（688年 - 698年）
烏地野抜勤豆可汗（慕容宣超）（698年 - ?）
慕容曦光（? - 738年）
慕容兆（738年 - 739年）
慕容曦輪（739年 - 749年）
慕容復（798年 - ?）

吐渾（唐末五代）

赫連鐸
李紹魯
白承福
王義宗

言語

吐谷渾は、独自の言語を持っていましたが、文字は持っていませんでした。そのため、上流階級は漢字を使用していました。

関連項目

羌
鮮卑
吐蕃
慕容部
トゥ族

参考文献

『魏書』列伝第八十九
『晋書』列伝第六十七 四夷伝

外部リンク

吐谷渾（中国語）

もう一度検索