九〇式三号水上偵察機

九〇式三号水上偵察機

九〇式三号水上偵察機（きゅうれいしきさんごうすいじょうていさつき）は、横須賀海軍工廠によって開発された日本海軍の偵察機です。この機体は、単発で複葉の三座配置を持ち、双浮舟式の水上偵察機として設計されました。

開発と生産の背景

これの開発は、1927年（昭和2年）に始まりました。この年、日本海軍は一四式水上[[偵察機]]の後継機を探し、愛知航空機、中島飛行機、川西航空機の三社にその開発を依頼しました。また、横須賀海軍工廠にも独自に一四式二号水偵改一Cの試作が命じられました。

設計者には佐波次郎少佐が任命され、彼は一四式水上[[偵察機]]を基に新たな機体の開発に取り組みました。1931年8月には、ブリストル ジュピター発動機および九一式液冷500馬力発動機を装備した試作機が完成しました。一方、愛知航空機らは複座型の水上偵察機の設計に専念することを決定し、最終的には横須賀海軍工廠が図面を完成させることとなりました。

この機体は一四式と命名されていましたが、実際には胴体の構造は鋼管の溶接によるもので、後方部分を細くし銃座を設けるなど、設計が大きく変更されていました。その後、ロレーヌ450馬力発動機を装備した一四式二号改一Cや、機首を延長した一四式二号改一Dを経て、1932年（昭和7年）4月に九〇式三号水上偵察機として正式に採用され、川西航空機による量産が始まりました。

特徴と性能

九〇式三号水上偵察機は、前の一四式二号水偵と比較して、最大速度はそれほど変わりませんが、武装面での向上が著しい点が特徴です。前方に固定機銃が2挺、後方には旋回可能な機銃が2挺、さらに最大で250kgの爆弾を搭載可能です。初期の生産型はジュピター発動機を搭載していましたが、後期型では九一式500馬力発動機に換装されました。これにより、最大速度は185 km/hに向上し、3,000mまでの上昇時間も25分に短縮されました。

開発にはかなりの時間がかかりましたが、思ったほどの性能向上は見られず、後続機の七試水上[[偵察機]]（後の九四式水上偵察機）が順調に開発を進めていたため、最終的には生産機数はわずか17機となりました。

運用事例

1932年2月からは戦艦に搭載され、第一次上海事変の際には水上機母艦能登呂の搭載機として活躍しました。また、海軍に献納された航空機は「報国号」と呼ばれる中で、本機が第1号および第2号機として扱われました。九〇式三号水上偵察機には横須賀海軍工廠製の略号E5Y1、川西製の略号E5K1が付与されました。

性能諸元

• - 前期型 (E5K)

- 全長：10.812 m
- 全幅：14.46 m
- 全高：4.74 m
- 自重：1,850 kg
- 全備重量：3,000 kg
- 最高速度：178 km/h
- 乗員：3 名
- 発動機：中島 ジュピター 空冷星型9気筒　520hp
- 航続距離：6.5 時間
- 上昇率：3,000mまで33分20秒
- 実用上昇限度：4,050 m
- 武装：7.7mm機銃×4、爆弾 60kg×3 または 125kg×2

九〇式三号水上偵察機は、その設計や性能において多くの意義を持つ機体であり、日本海軍の偵察能力を支える重要な存在となりました。

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