九四式軽迫撃砲

九四式軽迫撃砲の概要

九四式軽迫撃砲は、大日本帝国陸軍で使用された迫撃砲の一つで、1934年に完成し、1936年に制式制定されました。本砲はその名からは軽迫撃砲と呼ばれていますが、実際にはその運用形態は重迫撃砲に相当するものでした。この砲は主に毒ガス戦用のガス弾を発射するために設計されており、榴弾の発射も可能でしたが、ガス弾投射の機能が主な役割とされていました。

技術背景と開発過程

本砲の開発は1931年にさかのぼり、フランスのストークブラン社とのやり取りが始まりました。フランスからは口径81mmの迫撃砲が提案されましたが、当時は別の歩兵砲の導入が進められていたため、採用には至りませんでした。しかし、迫撃砲の必要性が認識されたため、ストークブラン社から特許と見本を購入し、研究が始まりました。

研究の方針は、ガス弾の投射と榴弾射撃の両立を目指し、口径を10cm未満、射程を4000メートル以上と目指していました。また、有翼弾の発射方式についても検討されました。これらの方針に基づき、本砲はストークブラン迫撃砲の機能を拡大する方向で開発が進められましたが、特に毒剤の投射能力を重視して口径は90.5mmに設定されました。

砲の構造と特性

九四式軽迫撃砲は、その運用において反動が大きいため、砲身と床板の間に簡易な駐退復座機を設けて反動を吸収しました。しかし、この構造が複雑さを増し、砲全体の重量は約160kgに達してしまいました。実際の使用においては、陸軍習志野学校や陸軍歩兵学校での実用試験でその能力が評価され、最終的には1935年に仮制式、翌1936年には制式制定となりました。

配備と運用

製造された九四式軽迫撃砲は、約450門が1936年から1939年の間に完成し、主に中国戦線の迫撃大隊に配備されました。各迫撃大隊は3個中隊編成で、1個中隊当たり12門の本砲を保有していました。しかし、実戦を重ねるうちに、その構造の複雑さや重量の問題が指摘され、後に駐退復座機を省略した九七式軽迫撃砲への以降が進みました。それでも、本砲は第二次世界大戦終結の時期まで使用され続けました。生産は530から608門に達し、特にその独特な設計と用途において、陸軍の火力支援の一角を担う重要な武器でありました。

結論

九四式軽迫撃砲は、当時の戦争の必要性を反映した重要な兵器であり、特に毒ガス戦の文脈においてその存在意義が高まりました。研究開発から配備にかけてのプロセスは、軍事技術の進歩と当時の戦略的思考を示すものとして、今なお注目されています。

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