九寺

九寺について

九寺（きゅうじ）は、古代中国における官制の一部で、中央政府の事務執行機関として機能していました。この制度は、秦・漢の時代から宋・元にかけて存在し、重要な役割を果たしていました。九寺は、政務を担当する丞相の下に位置し、それぞれが特定の業務を担う部局として機能していました。何世紀にもわたり、九寺はその権限と役割が変遷しつつも、中国の官僚制度の一翼を担い続けました。

九寺の名称の由来

「九寺」の名称は、秦・漢時代から庶務を担当していた大臣である九卿に由来しています。彼らが管理していた官庁の名称に「寺」が使われていたため、その伝統が現在まで続きました。「寺」という語の元々の意味は役所であり、後に仏教の寺院の意味に転じたのです。九卿が正式に「九寺」と呼ばれるようになったのは、北斉の時代になってからであり、この頃から彼らの役割がより明確になりました。

歴史的背景

九寺は、漢が滅亡した後も六朝の時代までは重要な庶務機関として存在感を持っていました。しかし、魏では尚書という新たな機密文書処理機関が登場し、次第に実務行政の中での権限を強化していきました。これにより、なお一層尚書省の地位が確立され、九卿の実務は次第に後ろ盾を失っていきました。隋の統一により、古い制度が取り入れられると、九寺は六部の下位に位置づけられましたが、唐の時代においても九寺は残り続けることとなります。

隋・唐の九寺

唐代における九寺は明確な権限を持たず、既に確立された尚書省と六部の背景の中で形骸化していました。唐手法が中国の制度の理想形とみなされたため、九寺の名称は引き続き存在し、宋・元の時代でもその名は残りましたが、実質的にはほとんど機能していない状態でした。次の明代ではさらに数が削減され、五寺へと変わっていきました。

九寺の部局

九寺の構成は、特定の業務内容によって分かれており、それぞれの部局は多様な任務を持っていました。以下は、主な九寺の部局の概要です。

1. 太常寺：国家による祭祀や儀礼を担当し、また宮廷の音楽や医者、占いを管理しました。

2. 光禄寺：宮廷の様々な業務を司り、宴会やそれに伴う飲食の準備を行っていました。

3. 衛尉寺：宮廷の武器管理と警備を行う機関で、武器庫の管理をし、儀式の際には警備も担当しました。

4. 宗正寺：皇室に関わる事務全般を取り仕切り、皇族の登記や管理、また道士や僧侶の監督も行っていました。

5. 太僕寺：車や馬の管理を専門とし、宮廷の厩舎や牧場、車庫を監視・管理しました。

6. 大理寺：もともとは司法関連の業務を担当していましたが、その後は刑部に機能を奪われました。

7. 鴻臚寺：外国使節の応接を司り、到着した使節の待遇や儀式を担当しました。この名は、日本の平安時代に設置された鴻臚館とも関連しています。

8. 司農寺：国家の財政機関として、穀物や貨幣の管理を行っていましたが、戸部にその機能を譲りました。

9. 太府寺：財貨や交易を管掌し、都市のマーケットや物価管理に従事しました。

結論

九寺は、中国の歴史において官制の中心的な一部を形成しており、その存在は古代から近世にかけてさまざまな変遷を示しています。その役割と形は時代により変わりつつも、古代中国の官僚制度や政治において重要な位置を占めるものでした。

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