九州山十郎

九州山 十郎（きゅうしゅうざん じゅうろう）

九州山十郎は1889年に福岡県鞍手郡で生まれ、本名は中西十郎です。彼は相撲に情熱を持ち、地元で草相撲の大関として知られていました。1911年、佐賀県で行われた巡業の際に著名な力士・両國梶之助に見出され、出羽ノ海部屋に入門します。初土俵を踏んだのは同年の6月場所で、幕下付出からのスタートでした。彼の草相撲での評価が、その後の相撲界での成功を支えたと言えるでしょう。

彼は早くも1914年の1月場所で十両に昇進し、1915年6月場所には新入幕を果たしました。この時、両国梶之助が入間川部屋を設立したため、九州山もこちらに移籍します。入幕後の成績は驚異的で、わずか2場所で2敗と好成績を収め、1917年5月には小結、1918年1月には関脇、その年の5月には大関に昇進しました。

しかし、大関としての初場所では成績が振るわず、途中休場もあり、1919年1月場所では5勝5敗という結果に終わります。そして同年5月場所では小結に降格してしまい、わずか2場所でその地位を失うこととなりました。このような結果は、直前に皆勤していた力士としては異例であり、その後も彼の病気による影響は大きく、急速に衰えていきました。921年1月場所を最後に現役を引退し、その後は年寄・稲川を襲名するも、病と闘い続け、1927年に37歳で亡くなりました。

彼の魅力的な人物像は、独特の体型にあります。短躯で肥満体型、広い肩と逞しい上半身は特に相撲においては大きな武器となりました。その力を生かした鋭い突き押しで、多くの対戦相手を圧倒しました。特に、東西制での強敵、鳳谷五郎に対しては3勝2敗の成績を残し、「鳳キラー」とも名付けられるほどの存在感を示しました。

また、福岡出身の彼は九州男児の典型とも言える剛胆な性格があり、ある日、師匠の入間川を脅かす悪者を一喝して追い払ったエピソードには、敵を恐れた様子がありませんでした。しかし、その反面、時には気性が強すぎる一面も見られ、部屋の仲間を殴ってしまったことからの移籍事件もありました。それでも、彼の人柄は多くの人々に影響を与え、その後また和解しました。

彼の相撲人生は多くの苦悩に満ちていましたが、短い現役生活の中で示した力強さと独自のスタイルは現在でも語り継がれています。彼の成績は通算67勝44敗、幕内成績は57勝37敗で、特に大関在位は2場所という短さながらも、その存在感は他の力士たちに決して忘れられることはないでしょう。九州山十郎の人生は、相撲界の厳しさとそしてその中での人間の強さを教えてくれるものでした。

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