亀井矩貞

亀井矩貞の生涯と業績

亀井矩貞（かめい のりさだ）は、石見津和野藩の第7代藩主であり、津和野藩亀井家の8代目に数えられています。彼は1739年11月27日、江戸本所にて、藩主亀井茲親の次男である旗本菅沼定好の次男として生まれました。もともと彼は1500石を持つ旗本の家督を継いでいましたが、宝暦2年（1752年）に実家の第6代藩主、亀井茲胤が病弱であったことから、その養子として家督を継ぐことになりました。彼は同年の12月16日に従五位下・能登守に叙位・任官されます。

藩主としての苦難と努力

亀井矩貞は藩主として多くの困難に直面しました。宝暦3年（1753年）の春から初夏にかけて、桜田組の防火役に任命され、その後も幕府の命に従い様々な公務をこなしました。しかし、藩内では大洪水が発生し、6300石に及ぶ甚大な被害を被ることになりました。このような厳しい状況により、藩の財政は非常に困難な状態に陥りました。

財政再建のため、彼は製蝋工場の拡大を試みましたが、根本的には文学や芸術の発展に傾注する気質を持っていました。そのため、藩政の苦境を後回しにして出費がかさむ結果となり、財政再建は思うように進展しませんでした。

陶芸と文化への情熱

また、亀井矩貞の特筆すべき業績に、居城内に陶芸窯を設け、自ら陶芸に取り組んだことがあります。彼が焼き上げた作品は「御庭焼」と名付けられ、多くの人々に親しまれました。彼の創作活動は、ただ単に美術品を作るだけでなく、自らの文化的アイデンティティを形成していく重要な要素となったことでしょう。

彼はまた、安永2年（1773年）には、領内の安定を願い、京都の伏見稲荷から神を勧請し、三本松城内の太皷谷の峰に「太皷谷稲成神社」を建立しました。これは、藩内の平穏を祈念するための重要な宗教的取り組みであり、彼自身の精神的支柱となったことでしょう。

隠居と晩年

最終的に、天明3年（1783年）4月18日、彼は長男の矩賢に家督を譲り、隠居生活に入ります。そして、文化5年（1808年）には剃髪して「三松斎」と号し、さらなる精神的な充足を求める道を歩むことになります。彼は文化11年（1814年）6月16日に江戸で息を引き取り、享年76歳でした。

彼の生涯は、様々な試練とともにありましたが、文学や陶芸に対する情熱は決して薄れることなく、彼の名は今もなお歴史の中に残っています。

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