亀山弘章

亀山 弘章（かめやま ひろあき）

1955年7月13日、栃木県安蘇郡田沼町（現在の佐野市）に生まれる。大相撲の出羽海部屋に所属した元力士。本名は亀山弘章。力士としての最高位は東幕下11枚目であった。

角界への道

亀山弘章の角界入りは、やや特別な経緯を辿った。生家は衣料品問屋を営んでおり、その取引先の主人が当時の日本相撲協会理事長であった武蔵川（元前頭 出羽ノ花）と親交があった。この縁がきっかけとなり、武蔵川理事長は自身の弟子である出羽海（元横綱 佐田の山）に亀山家のことを伝えた。出羽海親方が自ら亀山家を訪問し、相撲界への入門を勧められたことが、彼の力士人生の始まりとなった。

土俵上の軌跡と苦悩

1971年1月場所で初めて土俵に上がった亀山は、その後着実に番付を上げていった。しかし、力士生活は常に順調だったわけではない。自身の最高位である東幕下11枚目まで番付を上げた1981年7月場所では、あと一番勝てば勝ち越しという状況で惜しくも敗れ、3勝4敗と負け越しに終わった。この場所での結果は、その後のキャリアに少なからず影響を与えた可能性がある。1988年1月場所で幕下で再び負け越しを喫して三段目に番付を下げて以降、残念ながら再び幕下の地位に戻ることは叶わなかった。その後は三段目や序二段といった下位の番付で長く土俵を務め続け、現役生活の大部分を過ごした。

土俵上での奮闘に加え、私生活でも厳しい状況に直面した。入門後に真剣に交際していた女性がいたが、当時の相撲界には関取になるまで結婚が認められないという慣例があったため、その地位に上がるまで結婚を待つ必要があった。しかし、不運にも膝を怪我し、相撲を取り続けることが困難となった。「これ以上彼女を待たせるわけにはいかない」との思いから、断腸の思いで別れを選択した。皮肉にも、別れた後、彼女は程なくして別の男性と結婚したという。さらに追い討ちをかけるように、実母がこの世を去るという不幸に見舞われた。母は息子の晴れ姿を見る機会を得られなかったことは、亀山氏にとって深い悲しみとして残ったことだろう。幕下上位まで番付を上げた場所でも、あと一歩のところで勝ち越しに恵まれず、いずれも負け越しで場所を終えている。

ちゃんこ長としての貢献

土俵外では、部屋にとって極めて重要な役割を担った。長年にわたり、出羽海部屋のちゃんこ長を務めたのである。特に、巡業先での食事が各部屋の手作りちゃんこだった時代には、食材を現地で調達することが必須であった。亀山氏はその責任者として、全国各地の巡業地における食料品店やスーパーの詳細な情報、例えば所在地、営業時間、そして「何が安いか」といった価格情報までを徹底的に調べ上げ、細かくメモにまとめていた。その情報収集能力は高く評価され、他の部屋のちゃんこ番からも頼りにされ、彼らも亀山氏の元を訪れてそのメモを参考に食材の買い出しを行ったという逸話が残されている。これは、力士でありながら部屋の食を支え、巡業という特殊な環境下での運営に陰ながら多大な貢献を果たしていたことを示している。

土俵を去る

結局、最高位から番付を下げ、三段目、さらに序二段へと移りながらも土俵を務め続けた。初土俵から実に22年という長きにわたる現役生活だった。1993年7月場所を最後に土俵を去ることを決め、力士としてのキャリアに終止符を打った。

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