亀谷俊司

亀谷俊司

亀谷俊司（かめたに しゅんじ、1910年7月11日 - 2010年4月2日）は、日本の著名な数学者です。教育者として、また数多くの数学書の著者・編者として、日本の数学界、特に数学教育の発展に大きく貢献しました。

生涯と学歴

1910年7月11日、日本の首都である東京に生を受けました。高等教育は東京帝国大学（現在の東京大学）に進み、理学部で数学を専攻しました。1936年に同大学を卒業し、数学者としての第一歩を踏み出します。その後も研究を続け、1945年には「ハウスドルフ測度と一般化された容量に就いて其の函数論への応用二,三」と題する論文によって理学博士号を取得しました。この論文は、解析学の一分野である測度論とその応用に関する重要な研究成果を示しています。

教育者としての経歴

大学卒業後、亀谷俊司は教育者の道を歩み始めます。まず、多賀高等工業學校（現在の茨城大学工学部）の教授として教壇に立ち、専門知識を次世代に伝える活動を開始しました。続いて、東京女子高等師範学校（現在のお茶の水女子大学の前身の一つ）の教授を務め、高等教育における女子学生への数学教育に尽力しました。

戦後の学制改革を経て、1949年にはお茶の水女子大学に奉職します。理学部助教授として着任し、その後教授に昇任しました。お茶の水女子大学では長きにわたり数学科の教育・研究を牽引し、多くの学生や研究者の育成に貢献しました。1976年には定年を迎え、大学から名誉教授の称号を贈られ、その長年の功績が称えられました。

研究分野と著作

亀谷俊司の専門分野は、博士論文のテーマからもわかるように、解析学、特に測度論や集合論、位相空間論といった分野に深く関わっていました。これらの分野に関する教育と研究を進めるとともに、その知識を広めるために多くの書籍を執筆・編集しました。

彼の著作は、大学レベルの専門的な解析学、集合論、位相空間論に関する教科書から、高校生向けの参考書、さらにはより広い層に向けた一般数学の入門書に至るまで、多岐にわたります。特に、岩波全書として刊行された『初等解析学』は、数学を学ぶ多くの学生にとって必読の書となり、広く利用されました。また、『ルベーグ積分入門』のように、比較的高度な内容を解説した書籍も手掛け、専門分野への導入を助けました。

教育への強い情熱を持っていた亀谷俊司は、単著だけでなく、著名な数学者や教育者たちと共同で書籍を編纂することにも積極的に取り組みました。彌永昌吉や田村二郎といった当時の数学界の大家とともに『微分積分学 基礎課程』を著したり、横地清と組んで『高校生の数学シリーズ』を編むなど、共同での出版活動を通じて、より質の高い、あるいは幅広いニーズに応える数学教育資料の充実に貢献しました。

晩年と顕彰

亀谷俊司は非常に長寿であり、2010年4月2日に99歳でその生涯を閉じました。その没後、長年にわたる数学の研究と教育への顕著な功績、特に女子高等教育における貢献が高く評価され、国から正四位の叙位を受けました。これは、彼の生前の業績が国家レベルで認められたことを示すものです。

主な著作・共編著一覧

• - 『初等解析学 第1』(岩波全書) 岩波書店, 1953年
• - 『初等解析学 第2』(岩波全書) 岩波書店, 1958年
• - 『集合と位相』(朝倉数学講座) 朝倉書店, 1961年
• - 『集合と位相演習』(朝倉数学講座) 朝倉書店, 1962年
• - 『ルベーグ積分入門』(広川数学シリーズ) 広川書店, 1967年
• - 『解析学入門』(基礎数学シリーズ) 朝倉書店, 1974年
• - 『よくわかる一般数学 上卷』亀谷俊司 等編. 実業教科書, 1950年
• - 『微分積分学 基礎課程』彌永昌吉, 田村二郎共著. 裳華房, 1951年4月
• - 『数表 数学公式集』伊藤豊吉共著. 市ヶ谷出版社, 1953年
• - 『高校生の数学シリーズ』全6巻 横地清共編. 国土社, 1965年-1966年

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