彌永昌吉

彌永昌吉（いやなが しょうきち）は、1906年4月2日に東京府で生まれ、2006年6月1日に100歳で亡くなった、日本の著名な数学者です。東京大学名誉教授であり、その数学的貢献と教育者としての業績は、日本の数学界に大きな足跡を残しました。

生い立ちと学歴

彌永は東京府立第四中学校（現在の東京都立戸山高等学校）を卒業後、旧制第一高等学校に進学しました。高校時代には、秋山龍や森外三郎らの翻訳した数学書や、アンリ・ポアンカレの著作に触れ、数学への関心を深めました。その後、東京帝国大学理学部数学科に進み、高木貞治教授に師事して主に類体論を研究しました。1929年に同大学を卒業後、1931年から3年間、ドイツとフランスに留学し、さらに研究を深めました。

研究活動と業績

1934年に帰国した彌永は、翌年東京大学理学部助教授に就任し、1936年には理学博士号を取得しました。1942年から1967年まで東京大学理学部教授を務め、その後1967年から1977年まで学習院大学教授として教鞭を執りました。専門は整数論であり、特に類体論における単項化や分岐理論の発展に大きく貢献しました。また、日本の数学界の発展に尽力し、後進の育成にも熱心に取り組みました。

彌永の指導を受けた主な門下生には、フィールズ賞を受賞した小平邦彦、ガウス賞を受賞した伊藤清、岩澤理論で知られる岩澤健吉、佐藤理論や佐藤超関数を確立した佐藤幹夫など、著名な数学者が多数います。自身の専門分野だけでなく、幾何や解析など、幅広い分野で優れた弟子を育てたことでも知られています。1970年にはフィールズ賞選考委員を務め、1978年には日本学士院会員に選出されました。

数学教育への貢献

彌永は、数学教育にも強い関心を持っており、中学時代の先輩である数学者の吉田洋一と共に、数学史の編纂にも携わりました。また、10ヶ国語以上の言語を習得していたことでも知られています。小平邦彦らと共に、東京書籍発行の算数・数学教科書の作成にも関わり、特に1970年代後半までその制作に貢献しました。

その他の活動

彌永は長野県軽井沢に別荘を所有しており、この別荘は「旧彌永家別荘」として国の登録有形文化財に登録されています。

家族

妹の小平セイ子は、彌永の指導学生であり、後に義理の弟となる数学者の小平邦彦の妻です。長男の彌永健一も数学者であり、ジャン＝ピエール・セールの「数論講義」などを翻訳しました。

受賞と栄典

1976年には、その功績が認められ、勲二等旭日重光章を受章しました。1980年には、フランス政府からレジオンドヌール勲章が授与されています。

著書

彌永は、多くの著書を執筆しており、その中には以下のようなものがあります。

『幾何学序説』（岩波書店、1974年）
『数の体系 上・下』（岩波書店、1978-1979年）
『数学の歴史 現代[[数学]]はどのようにつくられたか1』（共立出版、1979年）
『数学者の世界』（岩波書店、1982年）
『Collected papers』（岩波書店、1994年）
『ガロアの時代ガロアの数学 第1部・第2部』（シュプリンガー・ジャパン、1999年, 2002年）
『数学者の20世紀 弥永昌吉エッセイ集1941-2000』（岩波書店、2000年）
『若き日の思い出 数学者への道』（岩波書店、2005年）

これらの著書は、数学の研究者だけでなく、一般の読者にも数学の奥深さと面白さを伝えるものとして高く評価されています。彌永昌吉は、数学の発展に貢献するとともに、次世代の数学者を育成し、数学教育の向上にも尽力した、日本の数学界にとってかけがえのない人物でした。その功績は、今後も長く語り継がれていくことでしょう。

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