二ツ森 (秋田県・青森県)

二ツ森（泊岳）

二ツ森（ふたつもり）は、青森県と秋田県に跨る山で、世界遺産・白神山地の主要な山の一つとして知られています。別名、泊岳（とまりだけ）とも呼ばれています。

概要

二ツ森は、白神山地の中でも比較的容易にアクセスできる山として知られ、その知名度は高いです。長らく標高1086mとされていましたが、2011年の東日本大震災による隆起で1087mとなりました。山頂には三等三角点「泊岳」（標高1086.47m）が設置されています。

山名の由来と混乱

「二ツ森」という名前は、秋田県側から山頂が二つに見えることに由来します。一方、青森県側ではかつて「泊岳」と呼ばれていました。これは、白神山地の奥地がマタギしか立ち入らない道なき山々であり、青森県側から一泊しなければ往来できなかったことに由来します。しかし、近くにある雁森岳（がんもりだけ）と混同されることもありました。岩木川の源流が雁森岳の山頂直下にあるため、二ツ森が「岩木川の源流」と誤って伝えられることもありました。

明治時代の地理学者、吉田東伍は『日本山名辞典』の中で、白神山地を「泊岳山脈」と呼んでいます。

五所川原市出身の郷土史家、長尾角左衛門は岩木川の治水に尽力し、『岩木川物語』で岩木川の水源を泊岳（二ツ森）と記述しましたが、これは文献の解釈に誤りがあり、実際には二ツ森と雁森岳の間の無名峰が水源です。

地理

二ツ森は白神山地の中央を東西に走る稜線上に位置し、その稜線が青森県と秋田県の県境となっています。山の地質は主に緑色凝灰岩で、新第三紀層に属します。

稜線の北側には「泊りノ平」と呼ばれる緩斜面が広がり、赤石川の源流となっています。南の秋田県側は険峻で、米代川の支流である粕毛川の源流があります。山域はブナの原生林に覆われ、ニホンカモシカやツキノワグマなどの野生動物が生息しています。

地誌

秋田県側からは、二ツ森の山頂付近まで林道（青秋林道）が整備されています。この林道は、当初は青森県まで通じる予定でしたが、自然保護の観点から反対運動が起こり、秋田県側で中断されました。この運動がきっかけとなり、1993年に山域一帯がユネスコの世界遺産（自然遺産）に登録されました。

二ツ森は世界遺産の境界に位置しており、山頂一帯は核心地域に含まれていないため、届け出なしで登頂できます。秋田県が建設した林道は1995年に完全舗装され、多くの観光客が訪れるようになりました。

登山

二ツ森へは、自家用車で山頂近くまで行くことができ、気軽に登山を楽しめます。八峰町の国道101号から登山口までは車で約45分、そこから徒歩5分ほどで世界遺産地域に入ることができます。登山口から山頂までは往復2時間から2時間半の行程ですが、道中にはトイレや休憩施設はありません。山頂からは、白神岳や向白神岳など、白神山地の核心地域を一望できます。

参考文献

『日本歴史地名大系2　青森県の地名』,平凡社,1982
『角川日本地名大辞典2 青森県』,角川書店,1985
『青森県百科事典』,東奥日報社,1981,ISBN 4-88561-000-1
『白神山地ブナ原生林は誰のものか』,根深誠,2001,ISBN 978-4885364792
『日本山名辞典』三省堂,徳久球雄・石井光造・武内正・編,2011,ISBN 978-4385154046
『日本山岳ルーツ大辞典』竹書房,池田末則・監,村石利夫・編著,1997,ISBN 978-4812403440
『新日本山岳誌』日本山岳会・編著,2005,ISBN 978-4779500008
『津軽白神山がたり』,根深誠,つり人社,2000,ISBN 4885362598

関連項目

二ツ森 (曖昧さ回避))
八峰町

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