二ツ森貝塚

二ツ森貝塚：縄文時代の息吹を伝える史跡

青森県上北郡七戸町に位置する二ツ森貝塚は、縄文時代前期前葉から中期末葉（およそ5,500年前から4,000年前）にかけての貝塚を伴う大規模な集落遺跡です。その広大な面積は約30ヘクタールに及び、東西約600メートル、南北約170メートルの範囲に広がっています。1998年には遺跡の東側約3.5ヘクタールが国の史跡に指定され、その後2015年には約8.3ヘクタールが追加指定されました。また、県重宝である「鹿角製櫛」をはじめとする骨角器や、「榎林式」土器の標式遺跡としても知られ、同じ青森県にある三内丸山遺跡とほぼ同時期に栄えました。2021年には「北海道・北東北の縄文遺跡群」として、その歴史的価値が認められ世界文化遺産に登録されています。

縄文時代の環境と二ツ森貝塚

縄文時代初期から中期にかけての海面は、現在よりも5〜6mほど高く、気温も2℃ほど高かったとされています。当時の東北地方には縄文人が居住し、その多くは沿岸部に集落を形成していました。これらの集落に関連する貝塚からは、骨、植物、貝殻、住居跡など、様々な遺物や生態系の痕跡が見つかり、縄文社会の食生活や習慣を知る上で重要な手がかりとなっています。

二ツ森貝塚は、青森県内はもとより、東北地方でも最大級の規模を誇る遺跡であり、当時の太平洋の入り江であった小川原湖の西岸、標高30mの高原に位置しています。遺跡は高原の北斜面と南斜面の2つのエリアに分かれ、複数の貝塚が点在しています。

発掘された遺物と集落の様子

二ツ森貝塚からは、竪穴建物や貯蔵穴、人骨、装飾品などが多数発見されており、大規模な集落が存在していたことが明らかになっています。出土した貝殻は、ホタテガイ、ハマグリ、マガキ、アサリ、ヤマトシジミなど27種類にも及び、魚骨としてはマダイ、スズキ、ヒラメ、フグ、サケなどが確認されています。また、シカやイノシシなどの獣骨、土器、狩猟や漁撈に使われた道具、骨角器なども多数出土しています。

これらの出土品の中でも、「鯨骨製青龍刀形骨器」「鹿角製尖頭器」「猪牙製垂飾品」「鹿角製叉状品」の4点は、特に貴重なものとして県重要文化財に指定されています。また、埋葬されたイヌの骨も発見されており、縄文人とイヌが非常に密接な関係にあったことを示唆する貴重な発見となりました。さらに、この地域では本来産出されないヒスイや黒曜石なども出土しており、当時の人々が他の地域との交流や交易を行っていたことが伺えます。

史跡公園としての保存と活用

現在、二ツ森貝塚は史跡公園として整備され、保存されています。公園内には、復元された2棟の竪穴建物や、当時の植生を再現した「縄文の森」、散策路、見晴らし台などが設けられています。訪れる人々は、これらの施設を通して縄文時代の生活や文化に触れ、古代へのロマンを感じることができます。「二ツ森貝塚史跡公園」は、青森県上北郡七戸町字貝塚家ノ前に位置し、縄文時代の歴史を今に伝える貴重な場所として、多くの人々に親しまれています。

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