二里頭文化

二里頭文化：中国最古の都市文明の謎

二里頭文化は、紀元前2100年頃～紀元前1800年頃（または紀元前1500年頃）に中国の黄河中流域から下流域にかけて栄えた、新[[石器時代]]後期から青銅器時代初期の文化です。河南省洛陽市偃師区の二里頭遺跡からその名が付けられ、現在では100近い遺跡が確認されています。これらの遺跡は、河南省中部・西部を中心に、山西省南部にも広がり、その影響は陝西省南部や長江中流域にも及んだと考えられています。

二里頭文化の特徴：都市と青銅器の誕生

それ以前の新石器文化と比較して、二里頭文化の最も大きな特徴は、都市と青銅器の使用です。農耕や牧畜といった生産形態は新石器文化と大きな違いはありませんが、大規模な宮殿建築や高度な青銅器技術の存在が、社会構造や権力関係に大きな変化をもたらしたと考えられています。


二里頭遺跡では、広大な宮殿跡や、青銅器や骨器の工房跡、そして大規模な墓地などが発掘されています。これらの遺構は、高度な都市計画と、社会階層の分化を示唆しています。宮殿は方形で、南北約100m、東西約108mもの規模を誇り、塀や回廊などの施設も確認されています。また、宮殿の北側には、祭祀が行われたと考えられる大墓が発見されています。


出土した青銅器は、その精巧な技術と種類から、当時の高度な金属加工技術の高さを物語っています。また、軟玉製品、斧、鑿、刃、鏃、釣針、戈などの道具類や、酒宴に使われたと思われる容器なども発見されています。特に注目すべきは卜骨で、24種類の刻画符号が確認されており、その形状は後の甲骨文字と類似していることから、当時の文字文化の一端を示唆しています。

二里頭文化と夏王朝、殷王朝との関係

二里頭文化と中国古代史上の夏王朝、殷王朝との関係は、長らく議論されてきました。特に、二里頭遺跡で発見された宮殿や青銅器は、文献に記される夏王朝の存在を示す重要な証拠とみなす研究者もいます。しかし、文献資料に記された夏王朝の支配範囲は二里頭文化の範囲よりはるかに広く、また夏王朝最後の王である桀の伝説と殷の紂王の伝説の類似性などから、夏王朝に関する文献の信憑性には疑問も残されています。


現在では、二里頭文化を夏王朝と直接結び付けるには、さらなる証拠が必要であるという見解が主流になりつつあります。二里頭文化の後期には、周辺の漳河型先商文化や岳石文化との勢力争いが起こり、最終的には二里岡文化に取って代わられたと考えられています。二里岡文化は、後の殷王朝につながると考えられており、二里頭文化は殷王朝形成以前の重要な段階を担っていたと言えるでしょう。

二里頭文化の研究史と今後の展望

二里頭文化の研究は、1950年代の玉村遺跡の発見に端を発し、1959年の二里頭遺跡の発掘で大きく進展しました。その後、北京大学を中心とした研究機関による継続的な発掘調査や研究によって、二里頭文化の実態が少しずつ明らかになってきました。2019年には、「二里頭夏都遺跡博物館」も設立され、一般への理解促進にも貢献しています。


しかしながら、二里頭文化に関する謎は依然として多く残されています。例えば、二里頭文化の王朝の名称や、その社会構造、滅亡の原因など、未だ解明されていない点が多数あります。今後の発掘調査や研究によって、二里頭文化の全貌が明らかになることが期待されています。

関連用語

中国の青銅器
黄河文明
夏王朝
殷王朝
二里岡文化

参考文献

Fairbank, John King and Merle Goldman (1992). China: A New History; Second Enlarged Edition (2006). Cambridge: MA; London: The Belknap Press of Harvard University Press.
Li, Jinhui (November 10, 2003). “Stunning Capital of Xia Dynasty Unearthed”. China Through a Lens.
Liu, Li. The Chinese Neolithic: Trajectories to Early States
* Allan, Sarah, Erlitou and the Formation of Chinese Civilization: Toward a New Paradigm, The Journal of Asian Studies

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