二階堂副包

二階堂 副包（にかいどう ふくかね）は、1923年6月28日に東京府に生まれ、2001年8月23日にその生涯を閉じた、日本の数理経済学における極めて重要な研究者です。一橋大学および東京国際大学の名誉教授であり、その専門は数理経済学でした。1961年には東京大学から理学博士の学位を取得しています。

二階堂氏の学問的軌跡は、数学から経済学へと展開しました。1942年に東京物理学校（現在の東京理科大学）本科数学科に入学し、その後、東北帝国大学理学部数学科を経て、1946年に東京帝国大学理学部数学科に入学しました。1949年に東京大学理学部数学科を卒業した後、1950年には東京理科大学理学部の助手となり、専任講師、助教授と昇進しました。

彼のキャリアにおいて特筆すべきは、国際的な活動です。1955年から1956年にかけてスタンフォード大学経済学部客員研究員として米国に滞在しました。帰国後、1957年に大阪大学経済学部附属社会経済研究室（現在の社会経済研究所）の助教授に着任し、1963年には教授となりました。1969年からは一橋大学経済学部の教授として教鞭を執り、その間にもミネソタ大学（1971年-1972年）、カリフォルニア大学バークレー校（1972年-1973年）、南カリフォルニア大学（1977年-1978年、1981年-1982年）で客員教授を務めるなど、精力的に海外の研究機関との交流を深めました。一橋大学在籍時には、しばしば米国の大学と半期ごとに教えるという国際的なスタイルを取り入れていました。その後、1983年には筑波大学社会工学系教授、1987年には東京国際大学商学部教授、1989年からは同学経済学部教授を務めました。1997年に東京国際大学を退職して名誉教授となり、1998年には一橋大学名誉教授の称号を得ています。

二階堂氏の最大の功績は、日本の数理経済学の発展にあります。経済学に数学的な厳密さが導入され始めた時代に、彼は日本の数理経済学のパイオニアとして、その理論研究と教育において中心的な役割を果たしました。特に、一般均衡理論と経済成長論に関する研究は、日本の数理経済学を世界レベルに引き上げる上で強力な推進力となりました。

彼の研究の中でも特に世界的に知られているのが、「Gale-二階堂の補題」として名高い成果です。これは、完全競争市場における一般均衡価格体系の存在証明を巡る、1950年代前半の活発な研究競争の中で生まれました。この問題の本質が、市場の超過需要関数が持つ特定の数学的性質（「0次同次性」「ワルラス法則」「連続性」）にあることを、彼はデイヴィッド・ゲールとほぼ同時期に、かつ独立に発見しました。この発見は、一般均衡理論の基礎を築く上で非常に重要な貢献であり、その名前が定理として現在も経済学の教科書に記されています。数理経済学だけでなく、純粋数学の分野でも評価される研究を残しています。また、彼はEconometric Societyのフェローでもありました。彼の英文名は通常「Hukukane」と表記されました。

教育者としても、多くの優秀な研究者を育てました。門下からは、釜江廣志一橋大学名誉教授、佐々木宏夫早稲田大学名誉教授、伊藤隆敏コロンビア大学教授、武隈慎一一橋大学名誉教授、藤岡文七元内閣府審議官、米山優名古屋大学名誉教授など、日本の経済学界や官界で重要な役割を担う人物が多数輩出されています。

学外では、1978年から1979年にかけて理論・計量経済学会の会長を務め、学会の発展にも寄与しました。これらの功績が認められ、2000年には勲三等旭日中綬章を受章しています。

主な著作には、『現代経済学の数学的方法』や『数理経済学入門』といった国内向けの入門書、そして『Convex Structures and economic theory』や『Monopolistic competition and effective demand』といった海外向けの研究書があり、その幅広い研究活動の軌跡を示しています。二階堂副包は、日本の数理経済学の礎を築き、その国際的な認知度を高める上で、計り知れない貢献を果たした研究者であり教育者でした。

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