伊藤隆敏

伊藤隆敏（いとう たかとし）

日本の経済学者であり、国際金融論とマクロ経済学を専門としています。1950年10月6日、北海道札幌市に生まれました。経済学研究における卓越した貢献が認められ、Econometric Societyフェローに選出されています。また、ニューヨーク連邦準備銀行金融政策諮問委員会の委員も務めるなど、国際的な舞台でも活躍しています。ハーバード大学ケネディスクール客員教授、コロンビア大学国際・公共政策大学院（SIPA）教授、国際通貨基金調査局上級審議役、東京大学名誉教授、一橋大学名誉教授、元日本経済学会会長など、数々の要職を歴任しました。

研究分野

伊藤隆敏の研究は、特に国際金融、中でも為替レートのマイクロストラクチャーに焦点を当てています。この分野において、ノーベル経済学賞受賞者であるロバート・エングルとの共著論文を複数発表しており、その研究は国際的に高く評価されています。

生い立ちと学歴

小樽商科大学学長を務めた伊藤森右衛門の息子として生まれました。幼少期を小樽市で過ごし、東京教育大学附属駒場高等学校を経て、一橋大学経済学部を卒業。同大学院経済学研究科修士課程を修了後、ハーバード大学大学院経済学博士課程を修了し、Ph.D.を取得しました。ハーバード大学では、ケネス・アロー教授の指導を受け、ローレンス・サマーズ（元米国財務長官）と同級生でした。

職歴

ミネソタ大学経済学部助教授、一橋大学経済研究所助教授、同教授を経て、ハーバード大学ケネディスクール客員教授、国際通貨基金調査局上級審議役などを歴任しました。アジア通貨危機時には、インドネシア経済政策支援プロジェクトに参加し、経済破綻を防ぐための助言を行いました。また、タイ財務省財務大臣特別顧問や大蔵省大臣官房参事官（副財務官）も務めました。東京大学先端科学技術研究センター教授、東京大学大学院経済学研究科教授、政策研究大学院大学教授、コロンビア大学国際・公共政策大学院教授など、教育・研究機関における要職を歴任しています。

日本銀行副総裁人事とその後

2008年には、日本銀行副総裁に起用する人事案が国会に提示されましたが、参議院で不同意となり、実現には至りませんでした。その後、経済財政諮問会議議員を退任しています。

主張と政策提言

伊藤隆敏は、インフレターゲットの主唱者として知られ、日本銀行の金融政策に批判的な立場を取ってきました。また、消費税増税による日本の財政再建を主張し、構造改革の必要性を訴えています。混合診療の容認、TPPの積極的な推進、法人税率の引き下げなどを提唱し、労働生産性の高いセクターへの人材移動を促す政策の必要性を説いています。

日本の財政状況については、危機的な状況にあると警鐘を鳴らし、消費税率の引き上げを通じた財政政策の柔軟性の確保を主張しています。東日本大震災後には、復興特別税を提言するなど、政策提言にも積極的に関わっています。

受賞歴

日経・経済図書文化賞を2度受賞（1986年、2019年）、紫綬褒章（2011年）、チリ大学名誉博士（2015年）、瑞宝中綬章（2024年）など、数々の賞を受賞しています。

著書

主な著書には、『不均衡の経済分析』、『The Japanese Economy』、『消費者重視の経済学』、『インフレ・ターゲティング』、『デフレから復活へ』、『インフレ目標政策』、『日本財政「最後の選択」』、『公共政策入門──ミクロ経済学的アプローチ』などがあります。また、林伴子氏、清水順子氏、小川英治氏、星岳雄氏との共著もあります。

学術論文

多数の学術論文を発表しており、特に、Econometrica、The American Economic Review、The Review of Financial Studiesなどの主要な経済学雑誌に掲載された論文は、国際的な評価が高いです。

伊藤隆敏は、その卓越した研究業績と幅広い知識、そして積極的な政策提言を通じて、日本の経済学界、政策形成に大きな影響を与え続けています。

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