五・三〇事件

五・三〇事件について

五・三〇事件（ごさんじゅうじけん）は、1925年5月30日、中国の上海で発生した著名な歴史的事件です。この事件は、学生や労働者たちによるデモが、上海共同租界の警察によって弾圧され、13人の死者と40人以上の負傷者を出したことに始まります。また、この事件の中国語名である「五卅慘案（Wǔ-Sà Cǎn'àn）」として広く知られるようになりました。この事件は、その後の反帝国主義運動の引き金となり、五・三〇運動（五卅運動、WǔSà Yùndòng）として位置付けられました。

背景

1924年、第二次直奉戦争の余波によって、中国全土は乱れました。特に上海を含む都市部では、インフレが深刻化し、国民党は反帝国主義の活動を強化し続けました。さらに、孫文の死去（3月12日）後、国民党は各都市においてさまざまな運動に取り組むことになりました。共産党も、上海大学の学生などが参加して反抗運動を進めていました。

特に、労働者たちは悪化する労働環境に対する不満を募らせており、知識人たちは検閲や劣悪な労働条件に強い反感を持っていました。このような社会背景の中で、上海市民たちの租界に対する反感が高まっていたのです。

事件の発生

1925年5月、ついに市民の不満が爆発しました。5月15日、上海にある日系の内外綿株式会社の工場で、暴動が発生しました。この暴動に対して工場側が発砲し、共産党員の顧正紅が重傷を負い、翌日には死亡しました。この事態を受けて、抗議活動が広がり、24日には顧正紅を悼む大規模な葬儀が執り行われました。

さらに、運動の影響は他の都市にも広がり、29日には青島においてストライキが起こりましたが、これに対して日本軍と北洋政府が弾圧し、多数の死傷者が出ました。

5月28日、中国国民党の上海執行部は代表者たちに30日に大規模なデモを行うよう呼びかけました。しかし、当日、抗議の中心となっていた学生15人が警察に連行され、これに反発した市民たちが大規模なデモを組織しました。

その結果、上海の警察が発砲し、13人が命を落とし、40人以上が負傷しました。このことは、全国的なゼネストへと発展し、6月には省港大罷工が始まるなど、運動が広がることになりました。

意義と影響

五・三〇事件は、民衆運動が転換点を迎えたことを示す重要な出来事とされています。運動の中心が学生から労働者に移り、社会の変革の意識が高まる契機となりました。この事件は1925年7月に広東で成立した国民政府の発展にも影響を与えました。

また、事件に関わった租界警察の指導者たちは、当時の前近代的な鎮圧手法に反省し、後にSWATの原型とされる特殊部隊を編成しました。この事件は文化的にも影響を及ぼし、日本の作家である横光利一が小説『上海』の題材としました。

関連事項

関連する出来事としては、ヴェルサイユ条約や山東懸案に関する条約、上海クーデター、山東出兵が挙げられます。このように、五・三〇事件は広範な歴史的背景を持ち、その後の中国現代史においても大きな影響を与えました。

もう一度検索