五厘硬貨

五厘硬貨：日本の歴史に眠る小額通貨

五厘硬貨は、かつて日本で発行されていた硬貨の一つで、1円の200分の1という非常に小さな額面を持つ補助貨幣でした。その歴史は短く、実際に流通したのは大正時代の一時期のみですが、日本の貨幣史を語る上で興味深い存在です。

五厘硬貨の概要

五厘硬貨は、額面である5厘が1円の200分の1、1銭の半分にあたります。これは、額面上の表現は異なるものの、半銭硬貨と実質的に同じ価値を持っていました。五厘硬貨として実際に発行されたのは、1916年（大正5年）に発行された五厘青銅貨の一種類のみです。

1円未満の小額通貨であったため、1953年（昭和28年）の小額通貨整理法によって通用停止となり、現在では法定通貨としての効力は失われています。しかし、その歴史的な背景やデザインは、今なお多くの人々の関心を集めています。

五厘青銅貨の詳細

基本情報

品位: 銅95%、錫4%、亜鉛1%
量目: 2.1g
直径: 18.787mm
図柄:
表面：菊、唐草、「五厘」
裏面：桐、桜、「大日本」、年号
周囲: 平滑
発行開始: 1916年（大正5年）

発行の背景

1916年（大正5年）の貨幣法改正により、五厘青銅貨は発行されました。当時の青銅貨の地金価格が高騰していたため、以前に試作のみで終わっていた五厘青銅貨の規格を小型化し、同時に改正された桐一銭青銅貨と同じ模様に改められました。

デザインの特徴

表面には、16花弁の菊花紋章ではなく、10花弁の菊の花が上下に2つあしらわれています。これは、皇室の紋章である菊花紋章を避け、独自の意匠を凝らしたものです。

製造期間と希少性

五厘青銅貨は、貨幣価値の下落のため、1919年（大正8年）までのわずか4年間で製造が打ち切られました。同時期に発行された桐一銭青銅貨が1938年（昭和13年）まで製造されたのと比較すると、その短さが際立ちます。

大正5年銘から8年銘まで4種類の年銘がありますが、その中でも6年銘は製造枚数がやや少ないため、収集家の間では希少価値が高いとされています。

未発行・試鋳貨幣

五厘硬貨には、実際に発行されなかった試鋳貨幣や未発行貨幣も存在します。

明治30年銘: 1897年（明治30年）に貨幣法で制定された当初の規格で、直径21.818mm、量目3.564g。表裏の図案は1873年（明治6年）発行の半銭銅貨とほぼ同じですが、額面表記が「半錢」から「五厘」に変更されています。
明治32年、39年、42年銘: 1898年（明治31年）の貨幣法改正により制定されたもので、パリ大博覧会及びロンドン大英博覧会出品用として試作されました。量目は貨幣法による規定では3.564gでしたが、実際には3.75gのものが試作されました。
明治42年銘(別デザイン):直径19.9mm、量目2.1g。表面は「五厘」と抱き合わせ稲、裏面は旭日と「大日本」・「5RIN」の文字と年号のデザイン。
大正5年銘(試鋳貨幣):量目2.1g。表面は実際に発行されたものとほぼ同じですが、左右に桐紋がある点が異なります。裏面は旭日と「大日本」の文字と年号のデザイン。
大正5年銘(別デザイン):量目2.25g。表面は菊紋・桐・瑞雲と分銅形の中に「五厘」の文字の組み合わせ、裏面は旭日と「大日本」・「5 RN.」の文字と年号のデザイン。
大正5年銘(別デザイン):表面は桐の絵柄のみ、裏面は「五厘」「大日本」と年号。

これらの試鋳貨幣は、いずれも市場に流通することはなく、希少なコレクターアイテムとなっています。

五厘硬貨の意義

五厘硬貨は、その短い流通期間と小さな額面にもかかわらず、日本の貨幣史において重要な役割を果たしました。それは、当時の経済状況や貨幣制度、そしてデザインの変遷を物語る貴重な資料と言えるでしょう。

関連項目

日本の硬貨
日本の補助貨幣
* 半銭硬貨 - 実質的に同一額面を持つ硬貨

五厘硬貨は、その小さなサイズに歴史を秘めた興味深い硬貨です。これらの情報を参考に、五厘硬貨への理解を深めていただければ幸いです。

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